ラクノア「目標物爆破または停止」ノ仕事ヲ
引キ受ケテイタダケテ、アリガトウゴザイヤス。
命ニ関ワル仕事デヤスガ、
キッチリ仲介料ニテ、生命保証サシテイタダキヤス。

デハ、行動計画ヲ申請クダサレ。
猶、ラクノア世界ヘ持チ込メル所持金ハ、
今回「軍事警備会社貸し出し装備」ガアリヤスノデ
登録ノ必要ハナイデヤス。

マタ、『バウム』ニ登録済ノアイテムヤ技能ハ、、
ソノママ使エヤス。

健闘ヲ期待シテヤス。



「うーん。ボクなら、目標は、巨大ラクノスの内部に進入し、動力炉か燃料タンクを爆破することだね。これにより、内部からの誘爆で巨大ラクノス全体を爆発させることができれば……と思うよ」
 細身で小柄、そしてたれ目の少女トリスティアの行動計画。
 その内容を詳細に確認した“ヨーヨ”が、反応する。
“ナルホド……×××ラクノス動力源ノ多クハ動力炉形式デス……位置ノオオヨソノ見当ハ……×××……解析完了シマシタ。メモリーソナーヨリ動力源想定位置付近へ転送サシテイタダキヤス。ゴ健闘ヲ祈リヤス……”

 そしてトリスティアの意識が分離し、行動計画通り軍事警備会社から貸し出された15m級ラクノスに乗り込む。
「えーと、ボクの意識で動くんだよね。このラクノス……って」
 トリスティアの、“周囲を確認したい”という意識に合わせて、視界が360度広がる。
 その一体が向かう先で、さらに新たな扉が開いていた。
「……あれ? 内部は燃えてないの? 外は大火球になってるのに?」
 流星化した全長15kmラクノスの内部にいるトリスティア。そのトリスティアの視界に映るのは、ただ陽炎のゆれる空間ばかりだったのだ。しかしながら、この巨大ラクノスの外部は燃えているはずなのである。
「? 燃える対象がないのか……すでに燃えつきてるのかのどちらかだよね」
 火炎魔術を会得し、その炎の原理原則を理解しているトリスティアが、外部温度を確認すると1350度を指す。と同時に、温度の相対比較表がラクノス操縦席の壁面に表示された。
「へぇ、便利だね。えーと、1350度っていうと鉄が溶解して……陶器の炉内の温度だね。いかにラクノスが高圧・高温に耐えられるかといっても、装甲だけってことか……じゃ、外部の火勢は、これを見越した攻撃ってこと? じゃ、操縦者の生命は……絶望的ってことだよね……」
 ラクノスの内部であるからこそ、装甲に守られるラクノス操縦者。その内部がこの状態では、操縦者の生命は奪われていると考えてさしつかえなかったのである。“さる星系で起きた紛争”の凄まじさを感じつつ、トリスティアは迅速に動く。
「まずは動力炉というと、どこになるかな……?」
 トリスティアが、目標の動力系を確認する。すでに内部の動力機能はすべてストップしていたが、その配線は一つの方向に集まっていた。
「この真下? ……炎がない状態で“消火ランチャー”を使っても効果があるとは思えないけど!」
 せめてこの気温を下げることで、進入経路の確保を図ろうとしたトリスティア。トリスティアの操るラクノスが、銃口を真下に向けてランチャーのトリガーを引く。
「動力炉の爆破! なんとしてもやってみせるよ!」
 シュワウゥゥウウヴヴヴ!
 トリスティアのランチャーから発射される泡状の消火剤。その泡が高温の床面に触れたとたん、トリスティアの視界が白濁して消えてゆく。
 「な……!!!!!!」
 トリスティアの意識が薄くなる。



続ける