「セラ海域冒険録 〜イルマ古代遺跡〜」

ゲームマスター:大木 リツ

 世界ヴェルエルに存在するキビート……そこは様々な次元ずれの影響で他の世界から隔離された勢力地。
異世界も含め他の世界の影響を受けないその世界で一つの冒険録が記されようとしていた。

 南に位置するキビート海洋地区にセラ海域という未開拓海洋地区が存在している。セラ海域には取り囲むように特殊な強い海流が流れその海流で作られた渦潮が邪魔をし誰一人セラ海域に入った者がいない。
 しかし、先日セラ海域の東側で大規模な竜巻が発生し海域を襲うと海流の流れが変わり渦潮は消えセラ海域は船が易々通れる穏やかな海域に生まれ変わった。突如変貌を見せたセラ海域の様子に気づいた
キビート全域を束ねる連合勢力はセラ海域の調査を学者組織に依頼した。学者組織は調査団「テラスマ」を結成し学者組織幹部の息子トルカ・ウィシャードを総団長とし調査船サンテール号と物資の援助を受け調査に乗り出す。

 ▽ 調査団「テラスマ」総団長 トルカ・ウィシャードの場合

 キビート連合勢力から調査船サンテール号と調査に必要な物資の援助を受けた調査団テラスマはセラ海域に一番近い貿易と農業の港街ヨークテリスで調整を行っていた。貿易港とあって港は船員や旅行客で溢れ、商店が立ち並ぶ大通りでは観光客や住民で埋め尽くされ活気に満ちていた。
 そんな騒がしい大きな港での調査船サンテール号の存在は人気は目立ち人々の注目の的になっていた。
 だが総団長であるトルカの悩みは尽きなかった。

 「突然の調査団結成に満足に人を集められなかった……どうしたものか。船に乗る者達は全て非戦闘員だ。こうして調査という冒険に出て行く経験をした者がいない。万が一の為、一般から冒険者や傭兵を募集した方が良いか。しかし、資金が足りない……これでは」

 突然の調査団結成に人を集められなかったトルカは頭を抱えこの先の不安を吐き出した。船に乗る者は全て万が一に備えての戦闘力もなければ、見知らぬ土地での危険を回避できる経験もない……。調査といっても見知らぬ土地での冒険には変わりなかった。あるのは船を目的地へ向かわせる知識と技術古代歴史の知識だけで、それ以外は全くのド素人なのだ。だから少しでも調査に必要な知識と技術、そして何か未知なる者に遭遇した場合の守り手が必要だった。

 しかし、雇うにもテラスマに渡された調査団資金はあまりにも少なく船を出航させ無事にこの港に戻る資金しか与えられていない。突然の事でどの組織も資金を調達出来なかったようだ。このままでは学者や船員達の身が危ないが、トルカに手立てが全くなかった。現状に頭を抱えつつ、トルカは目の前の古文書を眺め溜息を吐きながら呟いた。

 「こちらの謎も解明していないというのに……」

 これから向かう場所はセラ海域の一番東側にあるというイルマ島イルマ古代遺跡という場所である。古文書に記された記述によると、その大昔まだ魔物が人々の脅威になっていた時代にイルマという人物が不思議な力で人々を守ったとされている。今回の調査はその不思議な力についての調査、その力を持ち帰る事がメインであり最重要課題なのだ。トルカはまずイルマ古代遺跡を調査しようとしたが……肝心の古代遺跡に残された謎の解明が未だに未解明のままだった。

 「『異端者には大地の子が刃を向けるであろう、子を纏いし者は大地の子が導くであろう』……これはどういう意味だ?」

 古文書に存在するその謎はトルカにも分からず、先行きの不安ばかりが募っていく。トルカは謎を残したまま、調査団を守り、共に不思議な力の調査や古代遺跡に残された古代の宝を探してくれる冒険者達を募った。

 「私達を守り不思議な力や古代遺跡に眠る宝を探して欲しい、君達の報酬は君達が見つけた宝であり、こちらからは何も報酬は出ないと思ってくれて構わない。私達の目的は不思議な力を手にする事だ……。また古文書に残された謎も是非解明してほしい。それと最後に注意事項だ、我らは機械を好まない。変わり者の考古学者のように機械を利用する者も私達は好まない。機械を持ち込むならず者は見つかり次第船から降ろす」

 トルカにとって許されざるものは機械の持ち込みや使用だった。このトルカが率いる一団はイルマが残したイルマ古代遺跡で人々を守った不思議な力についての調査と残された遺産や宝の回収を行う。これから向かうイルマ古代遺跡は30階程の塔をしており、その塔の内部を行き来するには塔の中央に位置する螺旋階段しかなく、その螺旋階段には階段に沿って風が上階から吹いており、途中の階からは物に掴っても上れないほどの強い風が吹き付けていた。目指すべき不思議な力は塔の最上階にあるとされているが、風が邪魔をして最上階に辿り着く事が困難とされていた。トルカは傭兵や冒険者達に団員の安全確保をしてもらい、見知らぬ土地での冒険の経験に役立つ知識を教えて貰いたいと助言を乞うている。また不思議な力や遺産の調査や回収お願いしたいという。


 ▽ 機械の発展を望む考古学者 メイリ・バルテイロスの場合

 「……ふふふっ、やっとこの日が来たわっ!! 待ってなさい、古代文明っ!!」

 調査団「テラスマ」への協力者として名乗り上げてきたのは、キビートから反逆者扱いを受けている考古学者メイリ・バルテイロスだった。キビートが機械技術を捨てたといってもまだ一部では機械を作り使用している人達が少なからず存在し、連合組織が圧力をかけているほどだ。一般的に機械に関わる人達はキビートに住む一般の人にとって反逆者であり、嫌われる存在。それだけ機械という存在は受け入れられない技術なのだ。

 「私だってセラ海域に纏わる古代歴史の解明に身を投じている考古学者の中の一人よ! 私はずっとセラ海域から流れてきた元素水晶について調べているの。ここから一番近い場所、イルマ島に行くって話じゃない?私の推測だとその場所に元素水晶がある筈なのよ」

 互いの主義を貫き通す二人だが、トルカはメイリの実力を買い不服ながらも副団長として迎え入れる。だがそれぞれイルマ島での役割は、さらに二分化されることとなった。調査団総団長トルカが率いる一団はイルマ古代遺跡で不思議な力に関しての調査、調査団副団長メイリは古代遺跡以外のイルマ島での調査に当たる事になったのである。

 「元素水晶って私が勝手に名前つけた水晶の名前なんだけど、この元素水晶は名前通り自然界の一般的な元素を吸収してその元素の力を得る水晶の事よ。昔の人はこの水晶に元素を吸収させ活用しそれで発展を遂げていたと思うの……きっと今よりも発展を遂げていたと私は思うわ。私が持っている赤い元素水晶がその証拠よ」

 お宝話をチラつかせなんとか協力者を集めたいメイリだったが、嫌われ者のメイリに協力する者はおらず誰もメイリに付いていこうと思うものはいなかったのだ。そのメイリも既にセラ海域に纏わる古代史について独自解釈を行い、イルマ島に一つの採石場が塔の南西、熱帯雨林の中にあることを突き止めていた。メイリが向かう採石場には元素水晶だけではなく、昔の人達が遺産や宝を守る為に採石場奥深くに埋めたという歴史が存在していたのだ。その在処は、遺産やお宝の近くには必ず何かしらの守り手が存在する事、メイリが求める元素水晶は空洞の所に存在されている事だ。採石場内部は暗く迷路のようになっており何が出てくるか分からない。協力して欲しい事は元素水晶の発見、遺産やお宝を探し当てる事だった。


 イルマ島は温暖な気候に恵まれ島の8割を森で覆われている島。イルマ島の南側には上陸可能な海岸が広がっているが、南側以外は断崖絶壁で囲まれ上陸出来る海岸は南側にしか存在しなかった。
 その南側から島の中央に目を向けてみると、生い茂った森の奥に空高く建てられたイルマ古代遺跡の塔が建っている。その塔は長年人の手から離れた為塔の側面は殆どが蔦で覆われ、塔の本当の姿を見る事は出来ない。
 森を抜けなければ塔に近づく事は出来なくその森や遺跡、採石場には古文書に記された「大地の子」達が侵入者を阻み襲い掛かってくる。例えその森を抜けたとしてもそれぞれの場所で困難が待ち構えている。
 果たして協力者は現れてくれるのだろうか?イルマ島から不思議な力や宝を無事に見つけ出し帰還できることが出来るのだろうか?また、不思議な力以外手に入れた宝は連合組織の役人が買い取るという話も出てきている。
 宝をそのまま入手するのも換金するのも手に入れた者の意思次第だ。
 全てが、協力者達に委ねられていた……。

【アクション案内】

r1.古代遺跡を調査、探索
r2.採石場を調査、探索
r3.個人で行動
r4.その他

【マスターより】

 初めまして!この度新人マスターとしてシナリオを書かせて頂ける事になりました大木リツと申します!
 不慣れな部分も多々あると思いますが皆様に楽しんで頂けるよう全力を尽くしたいと思います。
 シナリオは秋芳美希マスターがご担当されておりますヴェルエル世界の一部、キビートが舞台です!戦闘、友情、愛情、笑い?楽しければ全てよし!?
 1回きりのシナリオですが、1回きりだからこそ楽しんで頂きたいと思います。では、キビートでお会いましょう!

大木リツマスタートップPへ