「皇都太照機導帖」

ゲームマスター:飛鳥つばさ

【シナリオ参加募集案内】
導入:「翼よ、あれが皇都の灯だ」(第弐回/全六回)

皇都湾飛行機大会開催

 先月の「皇都〜函根間自動車競走大会」改め「血気血気自動車猛競争」に続き、西欧軍人サーペント卿の提供により、皇都湾を舞台とする飛行機大会が開催される運びとなった。

 今回参加飛行機の規定は、翼にて揚力を得る飛行機であること。気球、飛行船の類は不許可なので注意されたい。
 この天下では、翼にて飛行する飛行機はいまだ未発達の技術分野である。「是非この全人類の夢に挑戦して欲しい」との、サーペント卿の弁である。
 技術的な問題から今回飛行機そのものの供給は難しいが、資金に余裕のない参加者に対しては、サーペント卿が無利息にて開発資金を貸与して下さるとの話である。

 大会の舞台は、墜落時の安全を考慮し大台場を始点とする皇都湾内に設定される。
 各参加者の飛行は飛距離と滞空時間の両面から審査され、総合優勝に賞金壱千圓、二位の選手にも参百圓、三位には百圓が与えられる。
 今回は動力飛行機のみならず、滑空機も独自部門にて審査される。滑空機部門の賞金は参百圓。むろん動力飛行機の成績を上回れば、総合優勝も同時に手中に収められる。
 副賞としては飛距離滞空時間がそれぞれ別に審査され、各部門の優秀成績者には賞金百圓が贈られる。
 また、順位と関係なく、より斬新な技術を用いて製作された飛行機には技術賞として百圓が与えられる。
 無論先日の自動車競走同様、各受賞者はサーペント卿に招待され、名誉ある地位に浴することができる。

 先日の自動車競走は大盛況であった。今回も、我をと思わん面々の参加を期待している。


「こないだは惜しい結果だったけど、名誉挽回の好機よ!」
 真由は飛行機大会の参加要項をばしん、と机にたたき付ける。……なんだか見覚えのある光景だ。
「総合優勝で壱千圓。飛距離と滞空時間を両取りして弐百圓。当然技術賞も狙って百圓。しめて壱千参百圓。母さまの借金のかなりの額は返せる!」
「マユぅ、滑空機部門は狙わないのぉ? 賞金参百圓よぉ?」
 ぽんやりとした表情に似合わず鋭いつっこみの亜梨沙にも、しかし真由は動じない。
「滑空機なんて! あたしの知的好奇心は、そんなものでは満たされないわ! 皇都の科学力は天下一ィィィであることを証明するためにも、最新の動力飛行機で挑戦するのよ!」
「うぅん、でもこないだもみんな工夫してたしぃ、内燃機関って言うだけで技術賞は難しいかもぉ」
「心配無用! われに秘策あり!」
 真由は背丈のわりに豊かな胸を張った。あんまりこっちに回す栄養はなさそうなんだが、よく育ったものである……いや失礼。
「今までの飛行機の概念をくつがえす、超斬新な発想が、あたしの桃色の脳細胞にはあるのよ!」
「……そうぅ。それならぁ、アリサもいろいろ手伝うねぇ」
 亜梨沙は屈託なく微笑んで、両掌で大切な宝物の首飾りをそっと抱く。その仕草を見て、真由の表情がにわかにくもった。
(アリサ……こないだの競走での不思議な力。その宝石は一体何? そして、アリサって何者なの?)
 ……先日の自動車競走では、なんとも不可思議な出来事が起こった。真由たちは問題に巻きこまれ途中停車を余儀なくされたが、そこで亜梨沙が発揮した不思議な力により、危機を脱したのである。その力の源は、見る限り彼女が肌身離さず身に付けている首飾りの宝石であるようだ。
 姉妹のように育って来た二人の間に、微妙な距離が開き始めていた。

「ふふん、予想通り、飛行機大会に出るね、あの小娘」
 そのころ、 物陰からこっそり真由達の様子をうかがう人影が約三名。あ、いや、いまさら勿体付けるまでもなく、借金取りのはぐれ侍おみつ始め三人組である。
「とにかくあの年頃は、懲りるってことを知らないから始末に負えないねぇ。でも、それも今度までだよ。次こそ、あの小娘をぎゃふんと言わせてやる。そして超科学の遺産は、このあたしが手に入れるのさ!」
 高笑いを響かせながら、おみつは有造、無造の手下二人を蹴っとばして、自らの参加飛行機製作に向かっていった。

 その頃、横羽外国人居留地。
 陽光の届かぬ奥まった部屋で、西欧軍人サーペントは誰にともなく、ひそやかにつぶやいていた。
「始まったな、『計画』が……」


【アクション案内】

T1.真由達に協力して飛行機大会に参加する
T2.三人組に協力して真由達を妨害する
T3.自ら飛行機大会に参加し、優勝/副賞を狙う
T4.亜梨沙の不思議な力について調べる
T5.その他の行動