「聖アスラ学院のお化け退治作戦」

ゲームマスター:夜神鉱刃

【これまでの経過】
マギ・ジス世界紹介

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全2回*)

 聖アスラ学院は、マギ・ジスタン世界において、言わずと知れた、魔術師養成の有名学校だ。この学校の大学部までを卒業した者の大半が、将来は魔術の専門職に就くという。

 そんな名門校であるゆえに、学生の時分から実戦訓練を受けさせる方針であることも有名な学校である。当然、学内でも日々、事件や事故は起こるのであって、風紀委員会という名の自警団の活動も活発なのだ。

 そんなある日、風紀委員会に「とある事件」が舞い込んでくる……。
 すなわち……。
『聖アスラ像の首切り事件』と『食堂荒らし事件』の二件だ。

***

 1時限目に開講されている「魔導動物論」(動物を魔改造する魔術の授業)という大学部の授業を受けるため、女子大生のスノウ・ブロッサムは、午前八時前に登校していた。
 彼女は予定通り、早めに学校に着いたので、図書館で予習をすることにした。
 そして、図書館へ向かうため、体育館付近を通りかかったとき、あることを目撃してしまう。

 体育館前に人だかりができていたので、思わず近づくスノウ……。
 どうやら、聖アスラ像に異変が起きているらしい……。

「まあ、怖いわね! 聖アスラの首がないわ!」
「ぼとりと地面に落ちている首、まるでホラーね!」
「いや、これは政治的なメッセージか学院への挑戦だろう!」
「そうだな。違いない。最近、テロリストたちが、校門前で叫んだり、座り込んだり、何度か暴れていたからな!」

 野次馬たちは好き放題言っているが、スノウが野次馬をかき分けて、石像まで近づいてみると……確かに、「首」が真下に落ちている。

 スノウは、野次馬の最前列へ歩み寄る。
 そこに用務員のおじさんがいた。

「これ、どうしたのですか?」
「え? これって? さあ、わからないよ、委員長! 今さきほど、来て、気がついたら、こうなっていたんだよ!」

 ちなみに「委員長」と呼ばれているが……スノウ・ブロッサムは、学内の風紀委員会を束ねる委員長である。メガネと三つ編みが特徴的な、いかにも委員長で文学少女な外見である。実際に、「マギ・ジス文学」を専攻する大学部3回生なのだが。(ちなみに優等生なので、彼女は、専攻とは関係ない講義もよく受けている。)

「うーん、奇妙な事態ですね。本件は、さっそく風紀委員会が調査します。学院の上層部にはすぐに私が報告を入れておきます」
「うん。では委員長、任せたよ。私は仕事に戻るからね」

 しかし、犯人は、夜の厳重な学院の警備をどうやって突破して、しかも魔石で頑丈なあの像の首を切り落としたのであろうか。
 そして、首が切れていた石像もなかなかの「お化け」だが、厳重な警備をやすやすと突破する相手こそ……まるで「お化け」の類いではないだろうか。

 1時限目を休むのは、優等生なのでさすがに気が引けるスノウであった。こうなった以上、担当授業のウォルター教授には、風紀委員会の仕事があることを伝えなくてはならないだろう。

 その後、スノウは、「犯行現場」に人が近づかないように、魔術テープを張り巡らせ、現場保存をする。さらに体育館前と周辺、体育館、各石像、電気室などをざっと調べた……。

 風紀委員室に戻ると、今朝の事件の書類を作り始める。
 あとでメンバーを集めて改めて捜査をするために。

 一時間後……。
 スノウが風紀委員室で書類を作っている最中のことだった……。

「スノウ委員長! 大変です! 食堂が……! 『お化け』が出たそうです!」
「ん? 何の騒ぎなの、コーテス? 食堂がお化け?」
「いや、違います! お化けが! 食堂を!」
「まあ、落ち着きなさい、 とう!」
「ぐはあ!」

 今、慌てながら事件を持って来て、スノウの気付の一撃を受けて伸びているのは、コーテス・ローゼンベルクという副委員長である。彼は、長身で一見するとハンサムなのだが、よくぼおっとしている無口な野郎だ。こちらは大学部2回生で文化史専攻。

「で、コーテス。話を簡単に言うと……大学部の食堂が、昨日夜未明、何者かによって荒らされた、と?」
「はい……そうなんです! 今、ちょうど……朝食の時間帯なので、朝飯のサンドイッチを買いに食堂へ……行って来たら、食堂前が大騒ぎに……なっていました!」

 先ほどの「聖アスラ像」の事件に続き、食堂までも事件とは、不審な出来事が続くものだ。しかし、風紀委員会として、不審な点は順次、クリアして行かなければならない。スノウは、コーテスに質問を続ける。

「そう……。ところで、状況はどんな感じ?」
「それが……よくわかりません! 夜の厳重な警備があったはずなのに……なぜか犯人は……警備の赤外線にひっかからずに、100人分の食料を……荒らしたようです! まるで『お化け』がやったみたいだ……と、食堂では騒がれていました!」

『お化け』が食料を、しかも100人分も荒らすものかどうか、疑問は残る。こめかみに手を当てて、スノウは考え込む。

「で、犯人の目星とかわかる?」
「はい、謎の酔っぱらいが……出たそうです! その男が……『俺がやった』と言って、食堂で……暴れていました!」

 どうしたものか、と腕を組んで悩むスノウ。

 今朝、発見された「聖アスラ像の首切りの事件」にしても、コーテスが教えてくれた「食堂荒らしの事件」にしても、風紀委員たちの腑に落ちないことばかりである。
 こうも奇妙な事件が立て続けに起こるとは、「学院の風紀として、いかがなものか」と憤りを感じる風紀委員たちであった。

 風紀委員長スノウは、意を決した。
 委員会経由の仲間を集め、本格的に捜査して、事件を解決しよう、と。

<解説>

 参加するPCの皆様は、学院関係者のいずれかの立場という設定でお願いします。例えば、異世界から聖アスラ学院へ留学している留学生など。学年や所属は自由に設定できます。
 以下、風紀委員会で事件の情報を整理した書類です。まだまだ調査の必要性はありますから、下記の情報を手がかりとして、各自、捜査し、推理を組み立てて行ってください。

・聖アスラ像について。学院が創設された「前期近代」時代以来、学内の色々な場所に建てられている石像。身長は聖アスラと同じく175センチメートル。石像の重さは1トンで固定。原材料に、マギ・ジス周辺の森の洞窟から採取できる「魔石」を使っている。普通の刃物などでは石像を傷つけられない。それどころか首の切断は通常の武器ならばできない。

・大学部の敷地内に、聖アスラ像は五体ある。校門前、体育館前、食堂前、中庭、図書館前。うち、首が切られていたのは、体育館前の像。他の像は全て無事。どの像も原材料、大きさ、重さは同じ。

・聖アスラ像の首切りが用務員、野次馬、スノウらに発見されたその日の朝の時間帯、体育館は使われていなかった。朝練で使う部活も体育の授業も1時限前後にはなかった。ちなみにこの体育館は大学部の体育館である。高等部など他の学年の体育館は別にある。

・聖アスラ像周辺は、厳重な警戒がされている。夜、半径2メートル以内は魔術赤外線装置が張り巡らされていて、近づけない。赤外線トラップに触れると、警報が作動して、レーザー光線が標的を撃つ。ちなみに大学部の建物の雰囲気は白亜の大聖堂。周囲は森林。

・夜の大学部もあちらこちらに魔術赤外線が張り巡らされている。もし、大学部内部からの犯行であれば、犯人は赤外線にヒットしたはずだが、これもまたヒットしなかった。食堂も赤外線が万遍なく張り巡らされていたはずだが、犯人は、これもかいくぐって100人分の食料を荒らした。

・監視装置は校庭に10台ほどある。いずれも魔力を原動力として、電気を流し、校庭全体を見渡せる視野を持った魔術ビデオカメラ。しかし、犯行のあった夜、監視装置の電気室(無人)の扉が破壊され、コードは切断されていた。ちなみに校内には監視装置はない。(その代わり、夜は赤外線を巡らせていて、警備員が巡回している。)

・警備員が夜は警備している。警備中は、赤外線を部分的に解除しながら見回る。犯行のあった夜、見回りをしていたが、特に異常はなかった。まさかその夜、事件が起きていたとは、警備員たちも思わなかった。

・聖アスラ学院大学部の閉門時刻は午後十時。開門時刻は午前七時。この約九時間で学内に何かが起こったらしい。


【アクション案内】

y1.聖アスラ像を調査する。
y2.食堂を調査する。
y3.その他
第一回となる今回は、事件の「調査編」です。(うまく行けば、次回が「戦闘編&解決編」です。)主に<聖アスラ像>あるいは<食堂>のいずれかに向かい、調査をするようお願いします。なお風紀委員会は、スノウ委員長が<聖アスラ像>へ調査に同行し、コーテス副委員長が<食堂>へ調査に同行します。

【マスターより】

 皆様、はじめまして。この度、バウムサイトでマスターをやらせて頂くことになりました、夜神鉱刃(やがみ・こうば)と申します。よろしくお願いします!
 さて、今回のシナリオシリーズ、調査あり、推理あり、バトルあり、と出だしからハードなゲームになってしまいましたが、皆様のご健闘を祈ります。名推理を冴え渡らせて、学園の「お化け」事件を解決に導いてください!シナリオ第一回は地道な調査編になりますので、情報の収集と取捨選択、バッチリお願いします。