ゲームマスター:田中ざくれろ
【シナリオ参加募集案内】(第1回/全3回)
★★★ 「狼が来たぞーっ!!」 少年の叫び声が山あいに木霊する。 緑濃き丸みを帯びた山に囲まれ、斜面に沢山の山羊が放牧されている。 そこを離れて、すぐ麓(ふもと)にある町に少年が叫びながら駆けてきた。 町の人達は一瞬は少年の叫び声に驚いたが、すぐやれやれといった表情に戻り、今自分がしている仕事へと眼を戻した。 ピーターという少年が、こんな叫び声を挙げて山から下りてくるのは今日が初めてではない。 もう二十回以上、繰り返しただろうか。 ピーターは今日も山から駆け下りてくる。 これまで彼が来る度に、町の人人も山羊達を助けようとおっとり刀で駆けつけてやっていた。 だが、その度に肩透かしを食らわされていた。 狼なんかは何処にもいやしない。 山羊が牧歌的に草を食んでいる光景だけだ。 全てはピーターの嘘だ。自分に興味を惹く為と、大人をからかっているのだ。 「本当に狼の群が来たんだよっ!」ピーターの顔は必死だった。「助けてくれよーっ!!」 町の人間はとりあわない。自分がすべき仕事を続けるだけだ。 「ちぇっ!」 ピーターは舌打ちすると、無関心な大人達に背を向け、山へ戻っていった。 放牧地に散らばった山羊達はいつもと変わらない風情で、大人しく草を食んでいた。 ピーターは手ごろな石を枕にして、昼寝を始めた。 夏の風が草原を吹き抜けていく。 ★★★ やがて月日がたち、春が来た。 陽ざしが白い雲の間から暖かく降り注ぐ。 「一週間後、この町ではどんな嘘をついてもいい!」白髪交じりの町長が大声で観衆に叫んだ。「この町『モータ』では一週間後『大嘘つきコンテスト』を開催する! 飛び入り参加も自由だ! 勿論、この町の住民でなくてもいい!」 町の広場の演説台上で声を張り上げる町長に、町民達は不安そうな表情で戸惑い、顔を見合わせた。 『アレ』以来、モータでは嘘がタブー視されているムードがあるというのに。少なくとも大きな嘘を声高く叫ぼうなんて事は。 「一週間後、この演説台から自分の考えた嘘を発表してもらう! テーマは『実は自分の正体は××だった!』だ! 審査員はこのコンテストの聴衆全員だ! 最もおおげさで馬鹿げていてインパクトのあるもっともらしい嘘を、聴衆達に拍手と歓声と笑い声で評価してもらう!」 町民のざわめきが止まらない。 と、思いきや、次の町長の提案で不安げな声が収まった。 「このコンテストの賞品は『バハムート殺し』一樽だ!」 打って変わった歓声が酒好きが揃うモータ町民の集まった広場に轟いた。 バハムート殺しと言えば世界の果ての滝の一滴と呼ばれる九十八度の『凄』酒だ。 飲めれば勇者、飲まれれば敗者。なかなかお眼にかかれる物ではない。 これが賞品だとは。 嘘だって大勢を楽しませられればエンタテインメントだ。 皆は考えを変えて、町長に歓声と拍手を送った。 最近、町長はこれまでと変わって話せる男になったと評判だ。 一週間後のこの『大嘘つきコンテスト』が大きな祭になる事は誰もが予想出来た。 たとえ、普段は訪れる旅人も少ない、このモータの町でもだ。 ★★★ この『大嘘つきコンテスト』のポスターは近隣の町の冒険者ギルドの大掲示板にも貼り出された。 冒険の依頼書に混じって、ポップな字体の踊るポスターが皆の眼をひく。 『モータの町『大嘘つきコンテスト』参加者募集! あなたも口先三寸ででっかい嘘をついて、皆を楽しませてみませんか! テーマは『実は自分の正体は××だった!』 あなたのジョークセンスを皆に披露しよう! 賞品は「違いの解る大人のお酒は『バハムート殺し』一樽! 飛び入り参加大歓迎! 聴衆大歓迎! さあ、あなたも参加しよう! 町長エドワード・フランセ記』 開催の日付は一週間後と記されていた。 モータといえば、牧畜と林業が主産業である以外は特に皆に知られていない町だ。 町おこしでもするつもりだろうか。 ポスターはそれなりに冒険者ギルドで話題を集めている様だ。 ★★★ |
【アクション案内】
z1.『大嘘つきコンテスト』に参加する。 z2.モータの町を調べてみる。 z3.その他 |
【マスターより】
このシナリオの締め切りはエイプリルフールと重なる様にしてみました。 というかこの時期と重なる様に前回の読み切りシナリオを挟んだのですよ(笑)。 現実では嘘は往往にして罪ですが、この日とこのシナリオの中でだけは嘘は許されます。 思い切って派手な嘘をついて下さい。 そういえば昔はエイプリルフール名物だった某円谷プロはもうあの様な楽しい嘘サイトを公開して下さらないのですかね。寂しい限りです。 皆さん、あの頃の某円谷プロを超える様な楽しい嘘をお願いします。 では、次回もよき冒険があります様に。 |