ゲームマスター:田中ざくれろ
【シナリオ参加募集案内】(第1回/全3回)
| ★★★ 冒険者ギルドの酒場のテーブルで、一人の中年女が自分の両こめかみに人差し指を当て、眼を閉じて押し黙っていた。 大勢の見物人が見守るテーブルに置かれた大きな水晶球が曇り、やがて明るい像を結び始めた。水晶球は震え、その映像に音を足していく。 紅衣の中年女『イザベル』の超能力は『過去認知』。過去の情景を見る能力だ。 水晶球に映し出された映像は、何処とも知れぬ荒涼とした海岸の風景だった。 ★★★ 吾輩は白ウサギである。 名前はまだない。 放蕩しかない人生を送ってきました。 人生ではないですね。兎生です。 とにかく、吾輩は今日も海岸で遊んでいました。 その時、吾輩はふと思いました。 水平線の彼方には何が待ってるんだろ。 あ、突然ですが吾輩という一人称は固っ苦しいからやめます。あたしにします。 水平線も大げさですね。 海の向こうには向こう岸が見えています。 ただ、その海岸まではとても一跳びで跳べるとは思えません。 その途中の海には大きなワニが沢山泳いでいます。 あ、ワニというのは水に棲む巨大な生き物を指す古代語です。爬虫類のワニが棲んでいるわけではありません。 ぶっちゃけて言えば、サメを指す方言です。 あたしは思いました。 ワニをだまくらかして向こう岸まで渡れないか、と。 で、あたしは言いました。 「集合ーっ!」 何だ何だ、と何十匹ものワニ達は凶悪な顔を並べて集まってきました。ワニは一匹で軽く二mを越えます。 別にあたしとワニは仲がよいわけではありません。 それどころか気を抜いて海に落ちれば、たちまちこいつらの餌です。 「あんたら、自分達が何匹いるか知りたくない?」 「別に知りたくないや」 「いや探求の精神は大事だと思うよ。どうだ、あたしが数えてやろうじゃないか。全員整列! 右向け右!」 あたしはワニの頭の向きをそろえ、横並びに一列に並ばせました。 海面から出た尖った頭。こちらの岸から向こうの海岸まで並んだワニ達は、まるで浮丸太で出来た長い橋の様です。 「全員静止! じゃ。あたしが一匹ずつ数えてやるからね」 あたしは先頭のワニの頭に飛び乗りました。 そして数えながらワニの頭を跳んで辿っていきます。 「一匹、二匹、三匹、四匹……」 頭数を数えながらワニを一匹ずつ跳び移ります。 「六〇匹、六一匹……」 オツムが弱いサメはあたしの策略にまだ気がつきません。 向こうの海岸へと私は跳び移っていきます。 九八匹を数えたらあと一跳びで向こう岸です。 あたしはあまりにもうまく行きすぎな作戦に、思わずワニの頭上で立ち止まりほくそえみました。 「お馬鹿なワニさん♪ あたしはこっちの岸に移りたかったから並ばせただけなのに♪」 頭の上でお尻ペンペンしてやります。 「そら。こっちの岸に到着よ♪ 九九、ひゃーく♪」 ところがあと一息というところで最後のワニの頭が海に沈みました。 あたしは海の中に落ちました。 「よくも俺達の事を騙して馬鹿にしたな! 皮を?いてやる!」 「やーん! 痛い痛い痛い痛い!」 ワニ達は水中のあたしに群がり、よってたかってあたしの毛をむしりました。 あたしは全身の皮を剥かれて赤裸になりました。物凄い痛みです。海の水が肌にしみます。 ワニ達が去った後には、向こう岸に辿り着いたものの全身皮を剥かれた赤裸のあたしだけが残りました。 風さえ肌を刺す敏感な痛みにうちひしがれていると一匹のタヌキが通りかかりました。姿が人に似た、直立して着物を着たタヌキです。 「やあ。僕は『タヌーキー・イン・UK』。どうしたんだね、君は」姿に似合わないキザな声がかかります。 「それはこの海のワニにかくかくしかじか、まるまるくまぐま」 「それは災難だったね。痛みを治す方法を教えてあげよう。海水を浴び、山の頂で強い風と日光にあたって、横になっている事だ」 タヌキが去った後、あたしは海で水浴びし、傍にあった大岩に上って荒風を浴びながら直射日光で日光浴しました。 「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!」 タヌキが教えてくれたのは嘘でした。あたしは痛さが増した肌を抱えながら悶絶して海岸を転がり回りました。 すると次の人が通りかかりました。 白衣を着た顔色が悪い男と、黒衣の看護婦です。 「ウサギか……」男は呟く様にあたしに声をかけました。「大怪我をしているみたいだが……」 「それはこの海のワニにかくかくしかじか、まるまるくまぐま」 「そうか……。よし、私が治療してやろう……。私は天才だ、心配ない……」 「え。本当ですか」 「お前、名前は何という……」 「あたしはウサギである。名前はまだない」 「そうか……。ではお前の名は『プレイガールUSA』だ……。おまえは助けられたお礼に、これから混沌の仕事人プレイガールUSAとして生きていくのだ……」 ★★★ そして水晶球の光景は完全に消えてしまう。 「はい、無料バージョンはここまでだよ」『過去認知』を使っていたイザベルはマグカップに残っていた酒を仰いだ。 「今のが本当だって証拠があるの?」見物人の一人が疑わしげな声を投げる。「あんたの魔法で作った映像でなく」 「信じようと信じまいとこれが真実さ」女はあっさりと返す。 「おい。続きを見せてくれよ」見物人の一人がそう言うと周りの者も「そうだ、そうだ」と同調した。 「これからは商売さ」過去見の中年女は水晶球をバッグにしまう。「この件について、もっと水晶球で見てほしい事があったら五万イズム払いな、出歯亀ども」 ★★★ 『オトギイズム王国』東方の牧歌的な東洋風世界『アシガラ』地方。 夕暮れ。 山にある貧乏そうなかやぶき屋根の家の庭で、一人のお爺さんが哀しそうな顔を伏せていた。 お爺さんは泣いていた。 そして、そこに一人のバニーガールが通りかかった。 スタイルのいい若い白髪碧眼のバニーガールは泣いている老人に声をかけた。 「どうしたの。お爺さん」 「お主は何者じゃ」 「善人を泣かせる奴らがいれば、そいつらを仕置きするのがあたしの生き方です」 お爺さんは通りすがりのバニーガールに、自分が働きに出てる間に、山のタヌキが留守番の婆さんを騙して大怪我を負わせ、家の食糧やら貯えやらをすっかり奪ってしまった、と話した。 怪我が元でお婆さんは寝こんでしまった。 「お婆さんが可哀相で可哀相での。タヌキをぎゃふんと言わせてやりたいのじゃ」 「何だ。そんな事ならあたしに任せてください。あたしは混沌の仕事人プレイガールUSA。悪を懲らしめるのがあたしの仕事です」 ★★★ アシガラにある、とある冒険者ギルドに一匹のタヌキ男が訪れた。 「僕の名前はタヌキダ・タロー。作曲家だ。兄貴は狙われている」 粗末な着物を着たタローは受付に自己紹介すると、ギルドの受付嬢に仕事の依頼を語り始めた。 「優しい兄の消息を探し出して止めてくれ。悪ふざけがすぎて仕事人に命を狙われている」 報酬は一〇万イズムだという。 「兄貴は謎の白衣の男に改造されて以来、人が変わってしまった。今はタヌーキー・イン・UKと名乗っている。騒動を起こす前につれかえってほしい」 ★★★ プレイガールUSAは山で七輪に餅をのせて焼き始めました。 団扇で扇いで香ばしい匂いを飛ばしていると、やがて鼻をクンクン鳴らしながら男が現れました。 人の体格をしたタヌキ。着物を着たキザな男です。 「お前はタヌーキー・イン・UK」 「何だ。お前は僕の事を知っているのか」 「えー、いや。ふふふんと」 タヌキはプレイガールUSAの元の姿が白ウサギだと気づいてないようです。 「美味しそうな餅の匂いだな。それをこの柘植の櫛と交換してくれないか」 「その櫛はお婆さんから盗んだやつね」 「そうだ。この近所のお婆さんからとっちめて盗んだ。それが悪いのか」 「えー、いや。ふふふんと。そーねー、櫛はいらないから代わりにあたしが枯れ柴を集めるのを手伝ってくれないかしら」 「何だ。そのくらいお安い御用だ」 プレイガールUSAは、タヌーキー・イン・UKに背負子を背負わせました。しょいことは背に集めた柴や薪を集めて担ぐ道具です。 そして二人は背負子に柴を集める為に山の森に踏み入りました。 二人して柴を集めます。 と、バニーガールは時計の付いたダイナマイトを取り出し、キザタヌキの背負子に仕掛けます。 「……何だ。背中からカチカチ、音がする」 「それはね、この山がカチカチ鳥が棲む、カチカチ山だからだよ♪」 ★★★ 「何じゃこりゃ」 イザベルに金を払ってタヌーキー・イン・UKを調べようとした男は、水晶球に映った光景に自分の額を打った。 「これはちょっと未来の光景だね」過去認知しか使えないイザベルは自分でも意外そうに水晶球を調べる。特に異常はないようだ。「稀にこんな混線もあるんだよ」 「じゃあ、今からなら奴に時限爆弾が仕掛けられる前に会えるという事か」 「助けに行くのかい」 「いや……」 イザベルに情報収集を頼んだ男はこれから依頼を受ける事自体をためらっている。このままでは金を払っただけ損だというのに。 シリアスとは思えない雰囲気に興をそがれたらしい。 「……おや」イザベルはあらためて何も映っていない水晶球を覗き込んだ。「星が映っているね。今現在はウサギとタヌキは星としか認識出来ない。しかし、これは何だろう。まるで双子の星だ。区別出来ない二つの星しか映っていない」 ★★★ |
【アクション案内】
| z1.プレイガールUSAを懲らしめに行く。 z2.タヌーキー・イン・UKを懲らしめに行く。 z3.白衣の医者について調べる。 z4..その他。 |
【マスターより】
| ★★★ 待っていた人にはお待たせしました。Drデストロイが帰ってきました。 ……しかし残念ながら彼は今回は端役です。 欲求不満だ、と思う人はどうかタヌキとウサギをいじめて溜飲を下げてください。 何? 動物をいじめる悪趣味はない? そうは言わずに暴走する動物達を止めてくださいよ(笑)。 では次回も皆様によき冒険があります様に。 ★★★ |