『……の残照……』 〜異世界への階段
出演:ジュディ・バーガーとその祖父
ダイナマイトバディの乙女が気づくと階段の上に立っていた。 「ホワイ? ん〜……もうジュディ、何があってもOK、OKネ〜♪」 無機質な空間に浮かぶ階段の上で、陽気な声を響かせる乙女はジュディ・バーガー。すでに幾度が同じような経験をしているジュディは、肝のすわった青い瞳で辺りを見渡す。と、自分の立つ階段は直線的に進んでは曲がりくねり、さらに踊り場から四方に伸びて続いてゆくのが見える。 その時、闇の中に響き渡る音がある。 ドォン……ドォン…… 腹に響く様な重低音は、ジュディに「何か」を思い出させていた。 馬小屋の前で猟銃を手にした祖父が、顔を真っ赤に染めながら迷彩服の男達と怒鳴り合っている。 あんな怖い顔をしたグランパを見るのは初めてだった。 雷鳴にも似た砲声は、次第に近づいてくる。 まるで蜘蛛の子を散らす様に迷彩服の男達が逃げ、こちらを向いた祖父が何か叫んでいる。 大きな音と同時に窓ガラスが砕け散った。 ジュディがフラッシュバックを起した20年前当時、USWAニューアラモ自治市の近郊に広がる「バーガー牧場」は民兵組織と反乱軍の戦闘に巻き込まれていた。何度目かの臨時政府が成立した直後で、当時はそう珍しい出来事でも無かったらしい。まだ7歳のジュディは全く状況を判って無かったが、それでもビリビリと窓ガラスを振るわせる砲声に不安を抱いていたことを鮮明に覚えている。しかしジュディには、窓が砕けた後の記憶がない。眼を覚ますと、包帯姿の祖父が優しく笑いかけていたのだ。その時、自分の髪を撫でながら祖父が繰り返して言った言葉がある。 「お前が助けてくれたんだね、有り難うジュディ……」 その時の祖父の言葉は不可解だったが、ジュディにはそんな事よりも愛する祖父が無事で本当に嬉しかった。 ……遠い日の記憶。 ふと我に返り、ジュディは唐突に理解した。 「アイ・シー! ……ジュディがグランパを助けなきゃいけないのデスネ〜!」 そう考えたジュディが音の方向へと向かって走り出す。すると階段の先に光の扉が現れ、ジュディは躊躇せずその中に飛び込んだ。 ジュディの姿が消える。階段の空間。 消え行くジュディの姿の後も、響き渡る音にまぎれて囁く声が、ある。 「スベテハオモイノママニ……」 存在する世界はすべてが今、ジュディのものであった。 ジュディの目の前には20年前のバーガー牧場の光景が広がっていた。 美しい夕日が戦場を真っ赤に染めている。 遠くオレンジ色に浮かび上がる砲塔。 馬小屋の前から散り散りに逃げ出す迷彩服姿の人々さえも夕日に染まる。 ジュディは、今も砲声のとどろく中、祖父の名を叫びながら馬小屋の残骸へと走り出す。この時、残骸の下敷きになっていたジュディの祖父は、失血と重圧の為に意識を失いつつあった。その祖父は、自分の血と夕日とで赤く染まった視界の中に、未来の孫の姿を見ることとなる。誰に言われなくても祖父にだけはわかる孫の仕草と風貌。やがてジュディによって助け出された祖父は、折れた腕を前後させてジュディの頭を撫でようとしてできなかった。祖父は意識を失う中で独白する。 『有り難うジュディ……助けに……来てくれたんだね』 未来の孫に、伝えられなかった言葉。その言葉は、まだ7歳の孫に繰り返し語りかけられることとなる。 ……こうしてジュディの持つ不可解な因果律の輪が一つに結ばれたという。 |
【世界限定取得アイテム】
祖父の命:ジャディが助けた自分の祖父の命。(ジュディの世界限定) |
【マスターより】
素晴らしい世界観ですね! 本文自体もそれほど手を加える必要のない完成品です♪ アクション本文からも映像がにじみ出ていました♪ |