『機械仕掛けの……』 第1回予告
ゲームマスター:
富豪の娘、ラーシィ・コパーの小さなライオン型AI、イオの家出と暴走事件から1ヵ月後。ウィルポリスでは、新たな事件が起こっていた。 ここ最近になって、AIの突然の暴走が多発しているのである。幸いにも、まだ血なまぐさいことにはいたっていないものの、窃盗や職務放棄など、さまざまな問題が起こっていた。 非AIのロボットを製造する企業の社長、ギールウィン・ビーズは、AIの「心の回路」に問題があるため、このような暴走が起こっているのではないかと主張している。 社会的にも、AIに不信感を抱く人々は増えていた。AI製造企業の最大手であるコパー・グループにも不信はむけられ、社長のブレッド・コパーは窮地におちいっていた。 「大変だなあ、ラーシィの親父さん……」 探偵事務所のソファに座り、TVの記者会見で、質問をあびせられているラーシィの父ブレッドをみながら、赤毛の少年探偵、ジェークがつぶやいた。 「どうして、こんなことになってるの? だって、AIは……」 ソファの後ろから、ジェークの双子の妹、リータがTVをのぞきこみ、何かいおうとしたとき、突然、画面が切り替わった。 「臨時ニュースをお知らせいたします。現在、ウィルポリスの市街地で、AIが集団で暴れております。AIは、白衣を着た人物に率いられている模様……」 町中で暴れる、多種多様な姿形のAIの画像が映し出されたかと思うと、雑音が入り、男性の姿がクローズアップされた。 「我輩は、ドクター・ランドルゥである! このような社会は、正されねばならん! ゆえに、我輩が発明したAIとともに決起する!」 ぼろぼろの白衣を着たヒゲの男性は、拳を握りしめてわめいている。しかし、その真面目さがかえって、どこかユーモラスにみせてしまっていた。 「と、父さん!」 ジェークとリータは、同時にさけんでいた。物心ついたときから、母に聞かされていた父の名前である。そして、母を亡くしてからも、肌身離さず持ち歩いている写真に写っている人物に間違いない。 ドクター・ランドルゥは、15年前、すべてのAIに搭載されている「心の回路」を発明し、その直後、行方不明になっていた。社会的にはすでに死亡したと思われていたが、ジェークとリータは、必ず生きていると信じ、みつけだすために、探偵になったのである。 ランドルゥの容姿は、昔の写真のまま、黒い長髪を頭の後ろで束ねたもので、ぼさぼさになってしまっていることと、髪の色が違うこと、ヒゲが生えていること以外は、太く快活そうな眉など、ジェークによく似ていた。 「父さん、どうして、こんなことを……」 AIたちに破壊される町の映像を、リータは眼鏡の奥の緑色の目を見開いてみつめる。 「やっとみつかったのに……ああ、もう、わけがわかんねえよ」 ジェークは頭をかきむしった。建物が崩れる音が、TVから流れている。 「兄貴、どうしたらいいんだろ……」 リータはソファに身体を沈みこませ、泣きだしそうな声で隣にいるジェークに話しかける。 「リータ……」 ジェークは、普段は強気な妹がはげしく動揺しているのをみて、気持ちをふるいたたせてリータの肩に手を置く。 「父さんが破壊した町の損害請求が、私たちのところに来たらどうしよう? 借金まみれになっちゃったら……ん? なに、床に寝てるのよ?」 「は、ははは……」 思わずその場でずっこけたジェークはひきつった笑いをあげていたが、再び、決意をかためた。 「……止めにいかなくちゃな」 起きあがったジェークの言葉に、真剣な表情でリータはうなずく。 「うん、止めにいこう」 ジェークとリータは、顔をみあわせると、力強く立ちあがった。 |
【アクション案内】
M1.ランドルゥを止めにいく M2.AIが暴走する理由を調べる |
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