『Velle Historia・第1章〜忌わしき水の記憶』

ゲームマスター:碧野早希子

【シナリオ参加募集案内】(第4回最終回/第1章全4回)

 天空遺跡・特別中央区。ヴェレシティの高層ビル群よりも高くそびえる建物が多く立ち並び、本当の意味で王国の中心部だった場所。
 一番高い建物である王宮に、さらわれたナガヒサ・レイアイル(水の賢者ナーガ・アクアマーレ・ミズノエ)と、さらった本人であるアール・エス・フェルクリンゲンがいる。
 見つけ出してナガヒサを助けなければならない。そして、アール・エスとも戦う羽目になる事は十分承知している。向こうから挑戦状をたたきつけたようなものだから。
 一部はその区域の調査をし、残りの多くがナガヒサ奪還とアール・エスとの対決に向かった。
 先に来ていたグラント・ウィンラックが天高い階まで大穴を明け、近道を作る。64階である事は分かっていたものの、何処に二人がいるかまではわからない。そこで梨須野ちとせが先行して、通気孔から偵察を開始した。
 かなり奥の部屋だったが二人の姿を発見した。だが、ナガヒサの服装は既に着替えさせられており、まるで白い神父の服装のようにも見える。青い布を肩に巻いているが、これが水の賢者である事の証なのだろう。
 わざと捕まってみようとちとせは降り、その間にマリー・ラファルがセキュリティ無効化を始める。
 この部屋が、実はナガヒサが使っていた部屋である事を知る。また、ナガヒサのアクセサリー(魔導増幅器)は八賢者にしか所有できないものである事も。
 そして、先代の水の賢者――ナスカディア・アクアライドの遺体の事を聞くナガヒサ。だが、不気味な薄笑いのアール・エスが、耳を疑うような事を告げた。血は皇帝が力をつける為の輸血用に、肉体は皇帝の貢物として喰われたと。
 セキュリティの無効化に成功し、突入するラウリウム・イグニス達。当然戦闘となる。ナガヒサも防御魔導を使うが、アール・エスにはなすすべもない。
 彼の目的は王国を復活させる事――天空階級の一部は王国の復活を望む輩が少なくないという。その為には傀儡というわけではないが、ナーガにはシンボルとして役に立ってもらう事が明かされる。
「水の賢者は生命をも司る。その血、不老不死の威力もあるのならば、この俺でも効くはずだ」
 眉をひそめながら、ナガヒサは首を横に振る。
「貴方は勘違いしていますね。それは皇帝陛下と一部の王族しか効かないという事しか聞いた事がありませんが……それ以外のはただ威力を上げたり一時的に自然治癒力を高めるしかないと、ナスカディア様から聞いていますよ。どれも疑い深いですけどね」
 もはやこれまでかと思われた時、アール・エスに異変が起きた。眉をしかめたと思ったら、苦しい表情になる。
「こ、この音は……」
「もしかして、これの事ですか?」
 地下で調査していたシャル・ヴァルナードが、手に万年筆らしきものを握ってやって来た。そこから微かではあるが、超音波らしき音が発している。これが唯一の弱点だったようだ。
「き、貴様……それを何処で……」
「地下の胎児育成室というところで。やはりこれは失敗したときの為の抑制装置ですか。個人によって違う設定の特定音波によって動きを封じる事も、死なせる事もできる。幸い、八賢者にはこういうのは設定してありませんし装置も無かったから安心して下さい」
 シャルはアール・エスに向けて話を続ける。
「さて、あなたの事を調べていたのですが、興味深い事がわかりました。アール・エス・フェルクリンゲン、ヴェレ王国の皇帝直属の『近衛騎士団(インペリアル・ガーズ・ナイツ)』所属。王族との血脈は皆無。より戦力となる為に生み出された者で、ブローダとヴァナーの血をひいているという事もね」
 つまり、アール・エスはこの二つの惑星の種族の血を受け継いでいる事になる。
「今のアール・エスは大地革命での死亡寸前に二つの保険をかけた。一つは転生だったけど保証がなく、その後転生した記録がないし証拠もない。失敗だったってわけですね。もう一つは自分のクローンを記憶転移する事。それが今のあなたですね」
 ラウリウムが司法公安局がこっちに向かうよう手配してくれた事を告げる。それまでは抑制装置を作動させたままとなる。アール・エスが観念した様子は見られないものの、どちらにしろ一応の解決は迎える事ができそうだ。
ヴェレスティア大統領ワイト・シュリーヴまで自ら来た。アール・エスの名を聞いて考え込む。
「確か、王族を守る立場の人間だったと昔聞いていたが……生きていたのか。となると、不穏な動きの噂は本当だな」
「というと?」
 ため息をつくワイト。
「未だ何とも言えんが……情報収集をあたらせている。目的は多分ヴェレ王国の復活と、ナガヒサだろうな」
 アール・エスの言葉を再度思い出す。水の賢者は生命をも司る。疑惑はあるが、彼の血を摂取する事に生ずる効果の事を。
 アール・エスを乗せたヘリコプターを見送った後、ナガヒサ達は王宮を後にした。
 一時的な平和ではあるが、今後起こるであろうその時の為に必要な休息でもあった。



 その後の余談ではあるが、アール・エスには永久凍結による封印か惑星プロウトンへの流刑にするらしいとの情報が入ってきている。ただ、プロウトンは遥か遠い囚人惑星である為、誰も行きたがらないのが現状だ。もしそこへ送られても、またアスールへ戻ってくる可能性が高い。どちらにしろ、前者での判決の方向で進めているという。
 また、ワイト自ら特別中央区への調査を特別に許可される事になった。表向きは水の賢者からの特別許可という情報も加えられた。ナガヒサ本人は苦笑いしていたようだが、仕方がないと腹をくくったようだ。
 理由はアール・エスの件もあるが、今後起こるであろう天空階級の行動に対してである。
 再び王宮を訪れる本格的な調査は数日後から開始される事となったのである。

【アクション案内】

o1.アール・エスの様子を見に拘置所へ赴く
o2.ナガヒサと共に特別中央区へ発掘調査(場所及び階を書いて下さい)
o3.住宅区へ遺跡発掘調査をする
o4.その他

【マスターより】

 今回も遅くなってしまいましてすみません。そして内容からしてもっととんでもない方向に行ってる気がしますよ……しかも最後の部分が急ぎ気味っぽくてすみません。
 さて、次回は第1章の最終回です。本章の復習としてこれまでの出来事を考えをしてみるも良し、次章の予習として色々と調べたり行動するも良しです。特定の人物を調べたい方、またはナガヒサに聞きたい事があるという方はその他を選択して下さい。
 それでは次回も宜しくです。