『Velle Historia・第2章〜煌めく風の息吹』

ゲームマスター:碧野早希子

【シナリオ参加募集案内】(第1回/第2章全5回)

 新暦25年5月2日。ヴェレスティア共和国の首都ヴェレシティ。
 2日間にわたって開催された国立会議場で天文学の会議を終え、ナガヒサ・レイアイル博士(水の賢者ナーガ・アクアマーレ・ミズノエ)はそこで知り合った『マージナル・クロックワーク』という博士と共に談笑をしていた。
「何か嬉しそうですね。良い事でもあったのですかな?」
 マージナルの言うとおり、ナガヒサはニコニコしている。
「ええ、久しぶり……といっても、1ヶ月ごとなんですけどね、私の知り合いが来るんですよ。命の恩人――とでも言うべきかな。それに……」
 これ以上は言わないが、ナガヒサにとってとても大事な人である事は間違いない。
 その帰り、マージナルと別れて帰路に着こうとしたナガヒサだが、突然ブレーキのすごい音が聞こえ、振り返る。
 スピードを少し上げたような赤い車が大きく見えた。
 ほんの一瞬の出来事だった。
 ナガヒサだけが交通事故に巻き込まれたのだ。
 車は数百メートル先で壁に激突して止まった。運転席には何故か誰も乗っていない。
 振り返ったマージナルは慌てて駆け寄るが、ナガヒサの身体から血が流れている。胸を強打したせいか息も絶え絶えで、放っておけば、命に関わる事は明白だ。暫くして、彼は意識不明の重体に陥ってしまった。
「おい君、早く救急車を」
 近くの野次馬に手配をしてもらっている間、マージナルはナガヒサのIDから血液データを確認し、知り合いの血液センターへ連絡する。
 重体のナガヒサは、ヴェレスティア総合病院の集中治療室へと運ばれる事になった。



 その頃、アスールで毎月行われる担当外務長官同士の会談の為、惑星キャエルムから一人の担当外務長官が下り立った。
 その名は『ツァイト・マグネシア』。ヴェレ王国の生き残りである天空階級の人間で、ナガヒサの知り合い兼武術の師匠でもある男。
「おじさま、ようこそ」
「毎回言っているが、その呼び方はやめてくれ。ツァイトでいい」
「そうはいきません、外務長官。荷物をお持ちしますから。エスト、貴方も手伝って」
「こんな軽いのに?」
「疲れてる人にそのまま持たせる気?」
「ぼくがもちゅー」
「お前は犬だから無理だろう……」
 呆れるツァイト。ふと、迎えに来た交渉官ラウリウム・イグニスと探偵エスト・ルークス、そしてアホ……もとい犬のジョリィしかいない事に気が付き、ナガヒサがいないのをいい事にこんな事を言う。
「いつも真っ先にマントを抱きしめて猫のように気持ちいい顔をする博士は何処にいるのかな?」
 こんな言われようだが、あながち間違ってはいない。
「それが……」
 ラウリウムとエストが顔を見合わせる。そして、一つのホログラフィー・コンピュータから録画した映像を見せた。
「博士は……事故に遭われ、今総合病院の集中治療室へ搬送されています」
「……ナーガ……!」
 いつも怖い顔をしているツァイトの表情が青ざめていくように見え、急遽総合病院へ向かったが、実際にナガヒサが集中治療用ポッドの中で治療をしているのを見て、ツァイトの気が晴れることがない。
 大統領夫人であり医師でもある『ウィンディア・シュリーヴ』が中心となって、蘇生手術を受ける事になった。
「マグネシア長官……申し訳ありません」
「堅苦しい役職で呼ぶな、ツァイトで構わん。で、ナーガの様子は?」
「危険ですね……知り合ったっていう博士から、今輸血の手配をしてるというのは聞いているけれども」
「ナーガはヴェレスティアにとって重要な逸材と共に、俺の大事な『友人』だ。全力を尽くせ」
 頷くウィンディア。ツァイトはいつもの怖い顔のままだが、心の中では冷静でいられなかった。
 ナガヒサの代わりに外見を似せた擬似OS『ペルソナ』搭載アンドロイドを用意し、起動させる。この『A・ナガヒサ』はナガヒサの(博士としての)記憶のみをコピーし、難なく仕事をこなせるよう、予め用意されていたものだ。
 ナガヒサは、別にこの事故に遭う事を想定して用意したのではない。だが人間はいつか事故に遭ってしまったり病気で死ぬ事がある。ある意味予想外で早まってしまったのは仕方がない。だが、彼のスケジュールに穴をあけるわけにはいかなかった。
 こうして、ナガヒサの治療と同時に交通事故の調査が始まった。そして、ツァイトも含めた担当外務長官同士の会談も始まったのである。

【アクション案内】

o1.ラウリウムと共にツァイトの護衛をする
o2.ナガヒサ(ナーガ)の容態を見守る/ウィンディアの手伝い
o3.A・ナガヒサやエストと共に事故検証を行う
o4.天空遺跡で調査(場所を明記。王宮の場合は階数も)
o5.その他

【マスターより】

 てなわけで、長き物語の第2章が始まるわけですが、やっとナガヒサの知り合いが出てくる途端に、いきなりナガヒサが交通事故に巻き込まれてしまうという……どうなるかは最後まで怪しいです。では今章も最後まで宜しくお願いします。