「天空の高みより」

ゲームマスター:高村志生子

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全8回)

 傾きかけた陽が、砂漠に長い影を落としている。最高階にある祈りの間でその日の勤めを終えた巫女のアメリアは、窓から遠くに見える金に輝く砂漠を眺めて物思いにふけっていた。普段は16という歳より幼く見える顔が、どこか張りつめている。アメリアは幼くして両親を亡くし、たった一人の兄とともにこの神殿で育って、神殿以外の世界を余りよく知らなかった。巫女になってからは外に出ることすらまれになったため、余計に世界に疎くなっていた。しかしそんなアメリアにも世界が再び混乱に向かっているという噂は届いていた。
 しかし今、彼女の心を捕らえているのはその噂ではなかった。なんとも形容のしがたい焦燥が胸の内にくすぶっていた。
「アメリア?どうしたんだ」
「お兄ちゃん」
 今は神殿騎士を務めている兄のルイードが、ぼんやりしている妹をいぶかって声をかけてきた。ルイードの背後には同じ神殿騎士でルイードの親友のダグラスがにやついて立っていた。
「アメリアだって年頃の娘なんだし、兄貴に言えないような悩みだってあるよな。気になる男でも出来たか?」
「アメリアはまだ子供だぞ」
 ルイードがむきになって言い返す。反応を予測していたダグラスは相変わらずにやにやしていた。アメリアと言えば、まだどこかぼんやりした顔で2人のやりとりを聞いていた。ルイードが気づいて心配そうに顔をのぞきこんできた。
「本当に、どうしたんだ。最近やけに考え込んでいるようだが」
「よく……わからないの。なにかに呼ばれているような、そんな感じがするのだけど」
「呼ばれて?祭司様には相談したのか」
「ううん。気のせいのような気もするし」
 軽く頭を振ると、はちみつ色の金の髪が光り輝いて揺れた。同じ色の頭がかしげられた。
「そんな顔をして気のせいもないだろう。1人で抱え込むな」
「うん……」
 と、はっとしたようにアメリアが駆けだした。ルイードの制止も聞こえないように一心に走って行く。ルイードは慌てて後を追っていった。やがてアメリアがやってきたのは、神殿の最下層にある開かずの間だった。立ち入りを禁じられているのではない。混乱期に何者かによって封印され、開かなくなっていた場所だ。しかし今は違っていた。アメリアが手を触れると、扉はいともたやすく開いた。
「開かずの間が開いた?」
 アメリアが引き寄せられるように中に入り込むと、まばゆい光が室内を覆い尽くした。それは一瞬のことだったが、アメリアにはそれで充分だった。表情からは迷いが消えていた。ルイードが肩に手を置くと、兄の顔を見上げて言った。
「どこかで大いなる力が目覚めようとしているの。はるか過去に封印された清冽な力。今の世界の混乱を収めるために必要なもの。私はそれを見つけに行かなくちゃ」
 巫女が受けた信託は、祭司たちの長老に伝えられ、探索隊が編成されることになった。中心となるのはアメリア、探索隊の隊長にはルイードが名乗りを上げた。
 世界のはずれにあり、比較的穏やかだった神殿はにわかにあわただしくなった。それと呼応するかのように、謎の集団が神殿を目指して侵攻してきていた。

【アクション案内】

S1.探索隊に加わる。
S2. 謎の集団と戦う。
S3.力について調べる。


【マスターより】

 いよいよ新シナリオ開始です!今回は長編です。どうぞよろしくお付き合いくださいませ。