「祈りよ届け」

−第1回−

ゲームマスター:高村志生子

 朴訥で純情なだけがとりえとも言えるアマルティア。文明もさほど発達しておらず、ただ人々は自然の恵みとともに細々と暮らしていた。太古の力にも恵まれたこの世界では、さまざまな生き物が共存していた。人々の滋養となる生き物、そして脅威となる生き物が。脅威となる生き物の最高位はドラゴンだった。彼らは縄張り意識が強く、自らテリトリーを出て狩りをすることはなかったが、その代りにうちに入ってきた餌は容赦なく食らった。まだ14歳のネアとネルの双子の両親は、ある嵐の日、村に帰る途中で荷馬車が壊れ、山中をさまよっているうちにあやまってドラゴンの縄張りに入ってしまい生涯を終えてしまった。
 轍の後を見つけた旅人から訃報を知らされた姉弟は、突然の出来事に途方に暮れていた。
「ネア!ドラゴンに復讐だなんて無理だよ。いくらネアが狩りが得意でも、相手がドラゴンじゃ……」
 男勝りで勝ち気な姉のネアは、怒りから両親の命を奪ったドラゴンに復讐するのだと言い出して、物静かな弟を困らせていた。ネルとて悲しくなかったわけではなかったが、ネア一人でドラゴンに勝てるはずがないことはわかりきっていた。両親だけでなくたった一人残された家族まで失うのではないかと、それに怯えていた。
「ネルの意気地なし!あんたは悲しくないの!?悔しくないの!?」
「悲しいよ。そりゃあ、悲しくないわけないけど。人間がドラゴンに勝てるわけないじゃないか。父さんたちは不運なだけだったんだ」
「っ……村のだれもがそう言うわね。不運だった、仕方がないって。でもそれが何の慰めになるってのよ。仕方がないなんてあきらめてしまうのはイヤ!」
「ネア!」  村はずれでそうやってもめていると、ひょっこり割り込んできたエルンスト・ハウアーがいきり立っているネアの肩をポンとたたいた。
「おまえさんたちに同情しないわけじゃないんじゃがな。ネア君に聞くが、君、食事は何日我慢できるかね?いや、そもそも飢えたことがあるかね」
「……ないけど。それがなに」
「そうかね。ではもう一つ質問じゃ。知らない男性や野良犬が家に入ってきて好き勝手にくつろいでおったら、君はどうするかの」
 反射的にネアがどなった。
「矢で蹴散らしてやるわよ、そんなの。なによ、何が言いたいの!?」
 エルンストはふむふむと顎ひげをなでながらひょうひょうとした声で応えた。
「君とてそうするじゃろう。自分の縄張りに入られたらたたき出す。それがまあ自然な反応じゃわな。ましてやいつ餌が手に入るかわからない場所では、目の前に餌があったら食すのは当然のことじゃないのかね。生き物ならば、食べねばならん。いつどんな獲物が手に入るかわからない自然の中では、それはとくに重要なことじゃろう。聞けばドラゴンは基本的には己のテリトリーから出てくることはないそうじゃな。ここの人たちは、だから襲われないようにきちんと把握して住み分けていたはずじゃ」
 エルンストの言いたいことをうすうす察して、ネアの顔つきがますます険しくなった。エルンストもそれに気づいたが、あえて言葉を続けた。
「君らのご両親は、意図したことではないとはいえ、その境界を踏み越えてしまった。結果としてドラゴンに餌として食われてしまった。それを不幸と呼ばないわけではないんじゃがな。だから同情せんわけではないと言ったんじゃが、非がどちらにあったか……君にもわかると思うんじゃがのぅ」
 ぱしりと小気味よい音がエルンストの頬で鳴った。
「ネア!あ、あの。すみません!」
 ネアは泣きそうな顔でエルンストの頬を張り付けた右手を左手でつかんでいた。ネルがおろおろとエルンストに頭を下げる。エルンストはこういった反応も予測していたのか、怒るでもなく、むしろ優しげな笑みを浮かべて双子を見つめていた。
「よいよい。ネア君もわかっているからこそ怒ったのじゃろう。のう、ネア君。この村の生存権を守る、あるいは広げるため、もしくは食糧問題を解決するためにそのドラゴンを倒そうというのじゃったらわしも何も言わぬよ。それは生存競争のうちに入るからのぅ。じゃが、私怨でドラゴンを倒したいというのは、人の傲慢でしかないんじゃよ。ただそこで暮らし、目の前にある餌をとって生きているドラゴンにとっては、理不尽な怒りをぶつけられるのは迷惑でしかない。それを知っておいてはもらえんじゃろうか」
 エルンストの淡々とした言葉が理解できないほど幼くはなかったネアは、それでも抑えきれない悲しみに泣きじゃくり始めた。そばで聞いていたレイナルフ・モリシタが肩を震わせているネアの頭をくしゃくしゃと撫でた。
「天災、あるいは運命として、運が悪かったとあきらめろってか……相手が自然界に生きるドラゴンじゃ仕方ねぇやな。オレもそう思うぜ。なあ嬢ちゃんや。仇討だっていうけどな、そのドラゴンにだって子供がいるかもしれないぜ?うまいこと復讐なりましたってことになったとして、今度はチビたちが「父ちゃんの仇ー!」なんてトカゲ語でちくちく叫びながら攻撃し掛けてきたらどうする?」
「……ドラゴンにそんな知能があるとは思えないけれど。でもそれで殺されてもあたしは文句言わないわ。お互い様だもの!」
 ネアがレイナルフの手を振り払いながらきっぱり告げると、今度はネルが真っ青になった。
「僕はイヤだよ。父さんたちだけじゃなく、ネアまで失ったら……そんなこと考えさせないでよ」
「ネル……じゃあどうしろっていうの。泣き寝入りすればそれでいいっていうの。あんたやみんなみたいに、あきらめろって?それができるなら、はなから復讐なんて考えないわ。そりゃ、これまでだってそうやってドラゴンに食われた人間がいないわけじゃないことは知ってる。そのたびにみんなが運命として受け入れてきたことも知っているわよ。あたしの力じゃとうていドラゴンにかなわないこともわかっている。それでもなにかせずにはいられないの!じっとなんてしていられない!」
「だからさ。弱いなら弱いなりに、強い相手をやり過ごす方法を考えたほうが利口じゃないのか」
「どういうこと?」
「あんたたちの両親は、道を見失ってドラゴンのテリトリーに入っちまったんだろ?そういう人間はほかにもいるっていうじゃないか。そんなことのないよう、もっと安全な道をきっちり作るんだよ。これこそ文字通り建設的なことだって。過去じゃなくて未来を、生きているやつのことを考えようぜ」
「……そんな技術、この世界にあるわけないじゃない。今の道だって先祖代々でやっと作り上げていった道なのに」
「そういうことなら俺様が協力してやるさ!」
 機嫌よくレイナルフが請け合う。工学系は得意中の得意なレイナルフであった。ネアがはぁっとため息をついた。
「それならネルに言ってやって頂戴。あたしの気持ちはそれじゃあおさまらないもの」
「ネア……どうしても?」
 ネルがネアを抱きしめながらつぶやいた。ネアもすがりついてくる弟の体を抱きしめながらささやいた。
「ごめんね。あんたをもっと悲しませることなんだってのは、わかっている。相打ちどころか無駄死にしに行くようなもんだもの。それでも、それ以外に気持ちの持っていきようがないの。おろかだって言ってくれていい。莫迦な姉だってののしってくれてかまわない。ただ、とめないで。お願いよ」
「復讐じゃなきゃいいんじゃねぇのか?」
 ほけらっとした声で語りかけてきたのはリシェル・アーキスだ。ネアが首をかしげた。
「どういう意味?」
「親を餌にしたドラゴンが憎いってなだけで倒すという考え方はいただけないなと思ってな。おまえだって食べるために狩りをしているんだろ。狩られている動物からしたら、おまえもドラゴンと大差ないんだぞ」
 ネアがぐっと言葉に詰まった。正論過ぎて反論ができないのだ。通用しないとわかっていても、つぶやけたのは悪あがきだった。
「だからっ。無駄死に覚悟だって言っているんじゃない」
「自分が死ぬことがどんな影響を与えるかわかっていないみたいだな。復讐心からのドラゴン退治なんて何も見いだせないだろうに。退治そのものには俺は別に反対しないぜ?ただ、復讐心という動機を捨てさえすりゃあな」
 ネアが怪訝そうな顔になった。ネルも不思議そうにリシェルを見つめた。
「ほかにも犠牲になった奴がいるんだろう?ってことはだ、いくらドラゴンがテリトリーからのこのこ出てこないといっても、この辺りはそいつのせいでそんなに安全なわけじゃないってことだ。だからこの先、同じ事故を起こさないようにするために退治するって考えることはできないか」
「みんなの安全のためにってこと?」
「そう。おまえ自身も含めたな」
「あたしのことは……」
「ネアってば」
 弟の苦しそうな声にネアがぎゅっと唇をかみしめる。自分が死んでしまったら心優しいこの弟は深く傷つくだろう。リシェルが相変わらずどこかのほほんとした調子で言った。
「負の感情は判断を誤らせる。自分が死んだあとのことをおまえが考えられずにいたようにな。同じ戦うなら前向きに考えろ。死ぬためにじゃなく、生きるために戦うことを考えるんだな。生きている人間のために、未来があるやつのために。どうだ」
 その考え方はネアには新鮮に感じられた。周りの人間は誰もがただ戦いに赴くことを止めようとしていたのだ。仕方がないのだと。だから余計に意固地になっていたように思う。リシェルの提案はネアのこわばった心を解きほぐしていった。
「生きのびるために戦う、か。そうね。そうあるべきかもしれないわね。あたしたちと同じ悲しみを負う人間がいなくなるように。それっていいかも」
 肩から力の抜けたネアに、リシェルがうなずいた。
「ドラゴン退治に手助けしてくれるやつはいるだろう。その気があるなら俺もできる限りの手助けをしよう、ネア」
 リシェルはこれと認められる相手のことしか名前で呼ばない。考え方を改められたネアは名前で呼ぶにふさわしいと思えた。そのことにネアは気づかなかったが、リシェルの言葉にこれまでとは違う勇気をもらっていた。

 その晩のこと。リシェルとあれこれ話し込んでいるネアを気にしつつネルが用意した夕食をリュリュミアが幸せそうな顔で食べていた。
「う〜ん、どれもおいしいですぅ。これって材料のお野菜が立派だからですねぇ。わたしは同族だからわかるですよぉ」
「同族?」
「ええ。わたしは正確には人間じゃなくて植物なんですぅ。だから畑仕事も大好きなんですよぉ。このお野菜はあなたが育てたものなんですかぁ?」
 リュリュミアからは心が和むような甘い香りが漂ってきて、表情もほんわかと暖かくて、ネルは久しぶりに嬉しそうな表情になった。
「そうですよ。僕はネアと違って畑仕事のほうが性に合っていて。野菜とかがすくすく育っていくのを見るのは気持ちいいですよね」
「そうそう。愛情をたっぷり注いで育てると、植物もちゃんとそれに応えてくれますもんねぇ。このお野菜がおいしいのは、あなたがたっぷりの愛情を注いであげたからなんですねぇ」
「ほんと?嬉しいな」
「本当ですよぉ」
 ほのぼのとした会話のわきでは、リシェルとネアが真剣な表情で語りあっている。どうやらドラゴン退治についての作戦会議のようだった。やっぱり行くのかと思って、ネアがふっと沈んだ顔になった。リュリュミアがその変化に気づいて顔を覗き込んできた。
「お姉さんが戦うことが心配ですかぁ?」
「……うん。やっぱりドラゴン相手なんて無謀だと思うもの。もう止めるのはあきらめたけど」
「ん〜そうですねぇ。自分より強い相手と戦って負けちゃったら食べられちゃいますものねぇ。わたしは食べるの好きですけどぉ、食べられるのは好きじゃありませんからねぇ」
 それは好きな人間のほうが少ないのではないだろうかとネルが素朴に思う。つい苦笑してしまうとリュリュミアがにっこり笑った。
「止められないというならついてゆきますよぉ。山奥ってことは木がたくさん生えているんでしょう。その上で待機していて、いざという時はこの蔦を投げ縄のようにして引っ張り上げて助けますからぁ」
 そういってリュリュミアが取り出した縄はなかなか丈夫そうであった。しかしいくらネアがまだまだ子供だといっても、さして大柄でもなく力もあまり強そうではないリュリュミアにそんな荒業ができるものであろうか。ネルの顔に心配そうな色が浮かぶと、やはり食事を豪快に平らげていたジュディ・バーガーががしっとネルの肩に手をまわしてきた。力強く引き寄せられて背中をばんばんとたたかれる。ジュディが叩きながらからからと笑った。
「力が心配デスか?それならジュディもいるからOKネ!」
 確かにジュディは女性ながら非常に体格がよく、背中をたたく力はそれでも加減してあるだろうに、ネルをむせかえらせるに十分だった。
「ジュディも愛情を注いでくれた家族を亡くしてマス。だからネアの気持ちもネルの気持ちもわかるデスよ。不意の悲しみはそんな簡単には受け入れない、難しいデスよね。ネアが憎しみを抱えるのも、ネルが自然節理?って気持ちになるのも、当たり前デス。それはね、ゆっくり時が解決してくれるのを待つしかナイ。大切なのは、ドラゴン退治自体は目的ではなく通過儀礼にしなくてはイケナイというコトですよ」
「通過儀礼?」
「ネアもネルも生きているんデスから。この先もたくさんの経験を重ねながら生きていかなくちゃならないんデスから。倒しておしまいじゃなくて、コノ経験を活かして、成長しなくてはネ!」
「先のことといえば……お二人はこの先どう生活していかれるつもりなんですの?」
 テーブルにちょこんと腰かけていた梨須野ちとせがネルを見上げながら問いかけてきた。
「ご両親なき今、自分たちで生活を支えてゆかなくてはなりませんものね。ご両親の後をついで行商をするのか、農耕や狩猟で生計を立てるのか。考えw手いらっしゃいますの」
 ちとせの問いにネルがかすかにほほ笑んだ。
「うーん、とりあえずは僕らは僕らがやってきたことをしていくしかないかなぁ。食べていくだけならそれで十分だし。この先行商するにしても、今はまだ年齢的に難しいからね。ネアがしたいっていうなら止めないけれど、僕は畑を放り出すわけにもいかないし」
「ああ、それもそうですわねぇ。ネアさんはいかがですの」
「え、なに」
 リシェルとの打ち合わせに夢中になっていて話を聞いていなかったネアが振り返って首をかしげる。ちとせはテーブルをととととよぎってネアのところに行くと、その肩によじ登ってから質問を繰り返した。
「ドラゴンを倒すのは心強い味方がいらっしゃいますからねぇ。きっとうまくいくと思うのです。だから大切なのはその先のことですわ。どうやって暮らしていくのかを考えておかなくては。ネルさんは畑仕事を放り出せないとおっしゃっていましたけれど、ネアさんはいかがされるおつもりですの?ご両親の後を継がれて行商をなさいます?生計を立てることを考えておかないとね。生きるためには目標があったほうが良いですもの」
「ああ……考えてなかったなぁ。死んでもいいやって思っていたから。でもそうよねー。生きていくんだったら、生活を支えることを考えなきゃいけないよね」
「もしご両親のお仕事を引き継がれるのでしたら、ご両親がどんな荷物を扱っていたのかとか知っておかれたほうがよろしいですわね。その、遺品とかはございますの?」
「父さんたちの荷物なら、連絡をくれた人がまとめて持ってきてくれているわ」
「拝見させてはいただけないでしょうか」
「いいわよ。こっちに置いてあるけど」
 親が使っていたと思われる小部屋に案内されると、小さな机の上に帳簿などが置かれていた。おそらくネルが片づけたのだろう。きちんと整理された品々を見ながらちとせが言った。
「扱っていた品は農産物が主でしたの?雑貨とかはやってらっしゃらなかった?」
「そうね。干し肉とか野菜とかを町に持って行って、たまに村で使う工具なんかを買ってきていたわ。お金ってあまりこの村では使わないのよ。必要なものは自分たちで作ったり獲ったりしていたから。でも道具は町でしか手に入らないから、父さんたちはそのために行商していたようなものなの」
「そうでしたの。あら、このつづらには何が入っているのですか」
 机の横に置いてあったつづらを見て、ちとせが問いかけてきた。ネアがふいと表情を暗くさせた。
「見たいなら見れば」
 そういって開けてくれた中には、おそらく普段は身に着けることのないような華やかな衣装がしまわれていた。男女二組ある。大きさからして、双子用の衣装に見えた。ネアがくすんと鼻を鳴らした。
「実はね、もうすぐあたしたちの15歳の誕生日なんだ。15になれば一人前と認められて、誕生日には盛大なお祝いをするのよ。きっと、その時用に父さんたちが買ってきてくれていたのね……見て、ほしかったな。あたしたちの晴れ姿」
「きれいですわね。お二人によく似合いそう……優しいご両親でしたのね」
「うん……叱るときはとても怖かったけど、あたしたちのこと、ちゃんと信頼していてくれてね。女の子だからおしとやかにーなんて言ったりもしなかった。狩猟だって大切な仕事だからって。あたしの狩りの腕は父さん仕込みなのよ」
「そうですの。お父様から受け継がれたものなのですね。ではこれからも狩猟を?」
「そうなるかなぁ。山や森を駆け回るのがやっぱり好きだし。行商はほかにもやっている人がいるから。今は体を動かしていたい気分」
 悲しみを紛らわせるには、ネアにはそのほうが良いのかもしれない。つづらの中の衣装をなでているネアの頭にちとせがそっと寄りかかった。
「だからって無理はなさらないでくださいませね。ドラゴンが強敵ならば、うかつに前に出たりして命を落とすようなことになってはいけません。行くのはかまいませんが、戦いは協力者に任せて、ネアさんは安全な場所にいらして」
「そんなのいやよ!たとえとどめをさすことはかなわなくても、他人任せで満足したくないわ」
「ジュディもソウ思うデスよ〜。確かに戦闘能力はジュディたちのほうがずっと高いですケド、この戦いはこの世界のことですカラ。ネアさんが主体とならないと。ネ?」
 いつの間にかやってきていたジュディが、ネアに向かって親指を立ててウインクした。ネアもきっぱりとうなずいた。
「でもネアさん」
「ネルのためにも、無理はしないって約束する。ただ、黙って他人任せにとは言わないで、あたしにできることだってあるはずだもの。この地方に住むドラゴンは太陽の力を持っているというわ。太陽を手に入れるのはあたしよ」
「太陽の力デス、か?」
「言い伝えだけれどね。ドラゴンは太古の力を持っているらしいの。だから倒したらきっとなにかしら手に入れられるんじゃないかな」
「ソレが希望になるとイイですね」
 ネアがようやく屈託のない笑顔を浮かべた。

                    ○

 アメリア・イシアーファはテルナ夫妻の悲劇を聞いたとき、幼い頃のことを思い出していた。両親が目の前で殺されたのはアメリアがまだ6歳の時だった。年の離れた兄という支えはあったけれど、突然大好きな人を失った悲しみは消えなかった。だからネアの気持ちは痛いほどわかった。そしてたった一人残された肉親は失いたくないというネルの気持ちも、自分のことのように理解できた。
「ねぇ、ネア」
 アメリアは自分の経験を話し、ドラゴンに戦いを挑む気持ちが変わらないか聞いてみた。幸いにして自分たちは親を殺した大きな力を打ち砕くことができたが、それは運命という力に導かれたおかげでもある。ネアがそういう力を持っているとは思えなかった。闇雲にドラゴンに向かって行っても返り討ちにされるだけだろう。そしてネルが一層の悲しみと苦しみを負うことになる。理解できるだけに、それだけは何としても避けたかった。ネアはアメリアの話を聞いて、少しの間、目を閉じていた。
「リシェルがね、復讐のためじゃなく、みんなが安心して暮らせるようにするために、ドラゴンを倒そうって言ったの」
「そう。それにネアも参加するのぉ?」
「もちろん。そりゃあ、あたしの力じゃ対して役に立たないと思うけれど、じっと待ってるなんていやだもの。ネルを悲しませたくはないから、無理はしないって約束しているけれど、できることはやりたいわ」
 目を開けて真っ直ぐにアメリアを見る視線に迷いはなかった。ゆるぎない決意を感じて、アメリアも説得をあきらめた。
「ね、アルトゥール」
「うん、わかってる」
 アメリアの隣でそれまで黙って会話を聞いていたアルトゥール・ロッシュが、アメリアの問いかけに力強くうなずいた。
「ネア、それなら特訓しよう」
「特訓?」
「後方で見守っているなんてできないんだろう。だからせめて一矢報いれるように、戦闘能力を高めておこうよ。それは自分の身を守ることにもなるしね。ネアの得意な武器は何?」
「弓矢よ。狩りの時にいつも使っているから。剣も使えるけれど、火を吐くドラゴン相手に接近戦はどうかなとも思うし」
「じゃあ、矢を僕に当ててごらん。もちろん僕は徹底的に防御するよ。戦闘能力は、悪いけれど僕のほうがはるかに上だ。持っている武器も違うしね。腕を磨いて、僕を納得させてみて。それまでは戦いを挑むのはお預けだよ。いいね」
「わかった」
「そういうことなら私も協力しよう」
 名乗り出てきたのは形代氷雪だ。狐の顔と複数の太い尾を持った異形の氷雪にネアが一瞬ひるんだが、かろうじて踏みとどまった。しかし不可思議な存在に一瞬とはいえ畏怖を感じたことに氷雪は気づいていた。だからこそネアを鍛えたいと思った。
「確かにネアの力じゃ一撃くらわせるのが精一杯だろうけれどな。何もしないよりはましだろう。アルトゥールがネアの戦闘能力を高めるというのなら、私はネアの度胸を鍛えよう」
「度胸?」
「今はやる気に満ちているが、実践の場ですくんで心が負けてしまったら意味もないし、命にもかかわるからな」
「ああ、そういうこと。そうね、ドラゴンは強敵だもの。ありえないとは言えないか。じゃあお願いするわ。徹底的にあたしをしごいて」
 きっぱりしたネアの言葉に男性陣がうなずく。アメリアだけが心配そうにしていた。
 それからさっそく特訓が始まった。氷雪はネアの愛用の弓にテイムプレートを貼りつけ、クロスボウを背中にくくりつけた狼を作り上げた。ネアが乗ってもびくともしないくらい大きな奴だ。氷雪はその狼を乗りこなし、クロスボウで標的(この場合はアルトゥールだが)に矢を放てるようになれと指示した。狼は氷雪と乗り手のネアの言うことを聞き、射るときのサポートもしてくれるようになっていたが、あえて氷雪はそのことを説明しなかった。使い手が自分である自信を持たせるためだ。ネアはやはり異形の獣に驚いていたが、ごくりと息をのみその背中にまたがった。
「行くわよ!」
「かかってこい!」
 ネアは最初のうちは乗りこなすことにも難儀していた。何度となく振り落とされ、擦り傷を負う。その傷をアメリアに治してもらうと、ネアは果敢に挑戦していった。
 もともと運動神経は良いほうのネアだ。それに狼も、ネアは知らなかったが、ネアの意思に応じて動くようになっていたので、数日もしないうちに息はピッタリになっていた。自在に動きまわれるようになったら、次は攻撃だ。人に矢を向けることにいささか抵抗のあったネアだったが、へろへろ飛んだ矢をばしりと叩き落され一喝されると、気を入れなおして攻撃に専念するようになった。
「お姉さん、すごいねぇ。たった数日なのに、もうあんなに動きが良くなってるぅ」
「ネアはああいうの得意だもの。畑仕事をやっているせいかな、腕力は僕のほうが実はあるんだけどね、ネアは弓矢の扱いに慣れているから。コツをつかみやすいんじゃないかな」
 確かにまだまだ威力は弱かったが、動き回る狼の背中からでもだいぶ正確に矢を放てるようになっていた。だがことごとくアルトゥールに防がれて、ネアが負けん気に燃える。息が荒くなったところを見計らってアメリアが休憩を呼びかけた。
「ネルと一緒に冷たい飲み物を用意したのぉ。頑張るのもいいけれど、疲れすぎてもだめだよぉ。いざってときに戦えなくなっちゃうからねぇ」
「ありがとう。うーん、それにしてもなかなか威力が出せないなぁ」
「狙いはだいぶん正確になったけれどね。弓矢の場合、やっぱり引きが強くないと威力は出ない。固定されたクロスボウなら狙いを定めるのはそんなに難しくないだろうから、今の感覚を忘れないようにしながら、できるだけ威力を出すことに専念してみなよ」
「わかった」
 ごっくんと飲み干した甘い水が、疲れた体に気力を取り戻させてくれて、ネアが特訓の再開を求めてすくっと立ち上がった。
 どうやら敵とみなした相手に攻撃を仕掛けることにためらいはなくなったらしい。氷雪はそれを見守りながら自分はペットのルフトとテレパシーで会話していた。ルフトには山中にいるドラゴンの住処を探索させていた。
『うん?ほかにもドラゴンを探しているやつがいるって?』
『あれは多分そうじゃないかと。この世界の住人ではないようですのよ。服装が違いますし、武器も持っていらっしゃいますし。確か一人は村で何か聞きまわっていたように記憶してますわ』
『目的が同じならばいいが。勝手に倒されても困るしな、接触して目的を確かめてくれ。で、肝心の敵の居場所はまだわからないんだな』
『はい。申し訳ありません』
『謝らなくてもいい。さっきのことを優先させろ』
『かしこまりました』
 その山中の探索を行っていたのはグラハム・アスティレイドとジニアス・ギルツだった。村で情報収集をしていたのはジニアスだ。過去に何度も同じ事件が起きているなら、ある程度ドラゴンの居場所を特定できると思ったのだ。テリトリーに入って帰ってきたものはいなかったので、あまり正確なことは分からなかったが、どの山に生息しているかくらいは推察できた。迷い人を食らうくらいだ。それほど山奥ではないだろうと思っていた。見つけ出すのが目的だったので、なるべく物音を立てないように木々の間からドラゴンがいそうな洞窟などを探していた。
 一方のグラハムは、自分は考えて行動するのは苦手だとわかっていたので、相棒の精霊エリナにドラゴンの気配を探ってもらっていた。ドラゴンは太陽の力を持っているらしい。それならばなにか特殊な波長を発しているはずだ。エリナならそれがわかるだろうと、ふわふわ浮遊しているエリナの後をばきばき物音を立てながら歩いていた。
「あまり音は立てないほうがいいよ。ドラゴンに気づかれたらどうするのさ」
 その物音を聞きつけてジニアスがやってくる。グラハムはふんぞり返って笑った。
「なあに、そのときはそのときさ。でっかいトカゲなんぞにそうそう負けるつもりはないしな。なんだ、おまえもドラゴンを探しているのか?」
「そうだよ。ネアが村の安全のためにドラゴンを倒す気でいるらしいからね。いきなり山の中に入っても遭遇できるとは限らないだろ。奴は簡単にはテリトリーを離れないらしいから、居場所を見つけてやったら役に立つんじゃないかと思ってさ」
「おお、やっぱりそうか」
 グラハムがポンと手を打った。エリナがグラハムに告げた。
「目的が同じなら一緒に行動いたしません?そのほうが効率的ではありませんの」
「エリナがそういうならそうかもな。おまえ、っと、ジニアスって言ったっけ?はどうだ」
「うん。俺は構わないよ」
 ジニアスも素直に同意した。とりあえずこれまでの成果を互いに確認しているところにルフトがやってきた。
「あなたがたはドラゴンを倒すためにこの山へいらしたのですか」
「ん?」
「あ、いや。倒すことじゃなくて居場所の探索が目的なんだ。勝手に倒してネアが納得するとは思えないしさ」
「では私と目的は一緒ですわね。同行させていただけませんこと」
「いいよ。よろしく。名前はなんていうの、小さなレディ」
 ジニアスの甘い言葉にむずがゆさを感じてグラハムが複雑そうな顔になる。朴念仁のジニアスには深い意味はなかったのだが。ルフトも忠誠を誓っているのが氷雪だけだったので、動じることなく名前を告げた。
「よし。じゃあ残りは南のほうだけだね。行ってみようか。偵察が目的なんだから、くれぐれもばれないようにね」
「わかっているさ」
 そういいながら明後日の方角に物音を立てながらグラハムが進んでいく。ジニアスがため息をついてそれを引き留めた。
 ドラゴンの探索はそれから数日続いた。エリナとルフトという特殊能力を持った味方ができたことで、気配を察知することは割合簡単だった。まず見つかったのは足跡だ。なぎ倒された木々の間にそれはあった。
「おお、でけー」
「うむ。大きいな」
 足跡はジニアスはもとよりグラハムが寝転んでもあまりあるくらいだった。かなりなくぼみになっているのは体格の良さをうかがわせる。かぎづめになっているのだろうか。くぼみの先端が深くえぐられていた。
「踏まれたらぷちとかいきそうだなー」
 けらけら笑いながらジニアスが感想を述べた。力には自信のあるグラハムが取っ組み合いを想像してひそかに闘志を燃やした。
 足跡を追っていくと、谷に出た。慎重に辺りをうかがっていると、谷の奥のほうで空に向かってまっすぐに伸びる炎が見えた。
「おい、あれ」
「ここのドラゴンは火を吐くらしいから、間違いなさそうだね。思ったより射程距離がありそうだな。遠いからはっきり言えないけれど、500mはあるかな。いや、もっとか」
 どうやら飛んでいる鳥を狙ったらしい。焼け焦げた点が落ちていくのが見えた。
 巣穴はこの谷らしいが、行動範囲がわからないので、ジニアスたちは見つからないように回りくどく数日かけてドラゴンを観察し始めた。さすがにこの世界の動物としては最高位の存在だけある。ドラゴンは知能は確かにあまり高くなさそうだったが、見るからに頑丈そうで、全長10mは軽く越す巨体の割にはなかなかすばしっこいようだった。獰猛さはさほど感じられなかったが、獲物を見つけるとやすやすと捕らえて食いちぎっていた。肉食なだけあって顎も頑丈そうだったし、並ぶ牙も鋭く太かった。気温に生態が左右されないためだろう。肌を覆ううろこはとても硬く見えた。
「翼はないから、空は飛べないのかな。行動範囲はあまり広くなさそうだね。しっかし体格いいなぁ。弱点があればネアにも攻撃させてやりたいんだけど」
「人間の場合、目が鍛えられない場所だぞ。ドラゴンもそうじゃないのか」
「目かぁ」
 確かにぎょろりしとしたまなこは柔らかそうだった。ただしまぶたはやはり硬そうだったので、タイミングが重要に思われた。
「ま、とにかくこれで目的は果たしたね。村に戻って伝えてあげよう」
 すでにルフトが氷雪に伝えていたのだが、わざわざ教えるまでもないと黙っていた。ドラゴンの強敵ぶりにグラハムが嬉々としていた。
「戦いの日が待ち遠しいぜ」
「無理はしないでくださいませね」
 エリナが心配そうにグラハムに言う。グラハムはエリナの頭を小突いて答えた。
「火を吐こうと、お前がいれば大丈夫さ」
「はい」
 信頼しきった声音にエリナがぽっと頬を染めた。
 山を下りて村に行くまでにまた数日かかったが、その間にネアの鍛錬は着実に成果を挙げつつあった。心配されていた威力のほうが、かなり向上したのだ。疾風のブーツでちょこまか逃げ回るアルトゥールを狙うのはなかなか難しかったが、精度は確実に上がっている。巨体のドラゴンを狙うには十分なまでになっていた。
 ジニアスとグラハムが村にきてドラゴンの居場所を伝えると、なにやら作っていた武神鈴がドラゴンの生息地に向けて偵察ロボット「グロイゾーX」を飛ばした。生き物ではないので、より詳細な活動を観察できると思ったのだ。
「だいぶん鍛えられたようだが、おまえが特殊能力を持たない非力な人間であることに変わりはないからな。だが、人間には知恵というものがある。力が足りないなら知恵を使え。本来、人間の最大の武器ってのはそれなんだからな。敵の居場所は分かった。行動範囲などの詳細は俺のグロイゾーXが調査してくれるから安心しろ」
 ロボットという概念のないネアやネルはそういわれてもぴんとこなくて首をかしげていたが、鈴があまりに自信たっぷりだったので素直にうなずいていた。
 テルナ家の居間に集った面々は、それぞれにドラゴンを倒す方法を話し合っていた。
「まずは奴の戦闘力を封じることだな。体より大きな落とし穴を用意して、誘い込めばいいだろう。穴くらいは掘れるだろう?」
 ネアとネルが顔を見合わせる。素朴な村の子供の遊びとして、落とし穴で遊んだ覚えは二人にもある。だが、巨大なドラゴンより大きな落とし穴などはたして作れるのだろうか。その疑問に同意したのはホウユウ・シャモンだ。
「落とし穴に誘い込むって考えには賛成だがな。ドラゴンよりでかい穴をこいつらだけに作らせるってのは無理があるんじゃないのか?それなら俺が穴に隠れていて、上を奴が通過した時に穴の中から攻撃を仕掛けてやろう」
 ホウユウの必殺技を使えばドラゴンを倒すこともたやすいだろう。だが鈴は首を横に振った。
「俺たちがホイホイ倒したんじゃ仇討の意味がないだろう。とどめはあくまでもこいつらにやらせないとな。とにかく動きさえ封じてしまえばこちらのものだ。せめて片足でも沈めてしまえれば。そうだな、半径10m位の穴でも足止めにはなるか。単純な相手なら、単純な罠のほうがよく効くというものだ。おお、確か谷に住んでいるんだったな。だったら上流の水源から水を引いて沈め殺すというのはどうだ。火の属性のドラゴンならひとたまりもあるまい」
 鈴の発想は面白いものだったが、あくまでもそれを非力な姉弟にやらせようというのは無謀を通り越して不可能としか言いようがなかった。ネアにしても、とどめは自分でという思いがなかったわけではないが、ドラゴンより大きな落とし穴だの谷をあふれさせるような仕掛けだのというのは、さすがにうなずけるものではなかった。村人全員の協力でも得られるのなら、あるいはではあったが、無理な願いであることは十分承知していた。でなければ異邦人を頼ったりしない。もっと早くドラゴン退治もできていただろう。ネアが頭を抱えた。
「気に入らんというのか。この復讐はお前たちの私怨だろうに。おまえたちがやらなくてどうする」
「それはわかっているわよ。だからできるなら最後の止めはあたしがさしたい。けど、落とし穴を作るだの洪水を起こせだの、不可能に決まっているじゃない。手は貸してほしいわよ。けど、知恵を出すならもっと現実的なものにしてよね」
「かなり大きそうだもんね。そんな大きな穴は掘れないし、仮にできたとしても、掘っている間に見つかって食われちゃいそうだねぇ」
 ネルも頭を抱えていた。ホウユウが顎に手を当てて考え込んだ。
「半径10mの穴か。それくらいなら俺が一瞬で作ってやれないこともないぞ。そのくらいの手助けはしてやっても構わないんじゃないか」
「手伝いたいというならあえてとめはせんぞ。とどめはこいつらに任せるっていうならな」
「うん、それならお願いしたいかな。攻撃はやれるから」
「じゃ、僕がおとりになろうか」
 ネルがそういいだして、ネアをぎょっとさせた。
「ちょ、ちょっと。ネルってば。危険よ」
 焦るネアにネルが微笑みかけた。
「ネアが戦うっていうのなら、せめてね。大丈夫、僕はネアとは違うからもの。無茶はしないよ」
「ネル……」
「うむ。いい心がけだ。その調子で頑張るのだぞ」
「俺も戦いたいんだが」
 単純さではドラゴンといい勝負のグラハムが口をはさむ。二人だけでやらせるのには抵抗のあるホウユウも戦う意志を示してきた。直接ドラゴンの姿を見たジニアスも、二人だけに戦いを任せるわけにはいかないと言い張った。ネアを特訓していたアルトゥールや、それをネルとともに見守ってきたアメリアも同意してきた。口々に反対されて鈴が肩をすくめた。
「手助け無用なんて野暮は言わないさ。やりたきゃ勝手にやれ。主体はあくまでもこいつらだってことを忘れないのならな」
「聞けば、私怨というより村の今後の安全のために戦うらしいじゃないか。こんな小さな、大した力も持たない子供がだぞ。協力もしたくなるさ」
 ついつい愛しいものを庇護したくなるのはもはや習い性となっているホウユウが、ネアとネルの頭をわしわし撫でた。その感触に束の間、父親を思った双子は、よく似た顔を見合わせて互いの決意を確かめ合った。
「では俺のロボットが帰ってきたらもっと詳しく作戦を練ろう」
 グロイゾーXが調査を終えて帰ってきたのは、双子の15歳の誕生日が間近という頃だった。さっそく手順や段取りについて決められる。ドラゴンがテリトリーを出ないといっても、あの巨体のテリトリーは結構広い。拠点の谷を中心に、生息地の山全域をほぼカバーしているようだった。戦いの場はなるべく広いほうがいい。下手に火を吐かれて山火事に囲まれても面倒だからだ。突破はたやすいが、自然破壊はなるべく避けたかった。あれこれ山を調査して、落とし穴の位置やおびき出す方法を皆で検討する。決戦の日は双子の誕生日と決められた。

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