『雨宿りの館』

ゲームマスター:田中ざくれろ

【シナリオ参加募集案内】(第1回/全2回)

★★★

「さて、みんな今日から新しい冒険を始めるんだね。プレイヤーキャラクター(PC)はこの前に作ったキャラクターを使うんでいいんだね。……さあ君達は初めて来たソドウの町で出会ったばかりだ。酒場で意気投合して仲間を組んだばかり。自己紹介から始めよう」
「俺はイワン! 筋肉自慢の剣士だ。とりあえずぶん殴ってから相手を確かめるぜ!」
「僕はロジャー。黒衣の盗賊さ。罠が仕掛けられてる箱なら任せてくれよな」
「私はハモン。グラマラスな女僧侶です。怪我やアンデッドには遠慮なくお呼びください」
「わたくしはニック。炎の紋章の魔法使い。早くホワイトドラゴンをファイヤーボールでふっとばしたいものだ」
「さて君達はこの酒場である噂を聞きつけた……」
「この町の傍に森はないか? エルフの森に火をつけようぜ!」
「……え? ちょっと待って」
「それより宝物を貯めこんでるゴブリンの洞窟を煙責めにしよう!」
「え、ちょ! それより……」
「この町にマジックアイテムショップはありますよね。襲撃してマジックアイテムを根こそぎ手に入れましょう」
「え!? え!?」
「この町の領主から姫を誘拐して身代金として黄金とマジックアイテムをいただく方がいいな」
「え。ちょっとみんなマスター(MS)の話を聞いてくれ……!」
「なあ、マスター。どれがいい?」
「……それらからはちょっと……」
「なんだ。マスター。自由度低いぞ」
「何でも出来るのがRPGのいい所じゃないんですか!?」
「そうだぞ。せっかくマスターをさせてやってるんだからわたくし達を楽しませてくれよな」
「…………」

★★★

 『雨宿りの館』という都市伝説を知っているだろうか。
 ある深い森の中に現れるという不思議な館の話だ。
 何処の森かは特定出来ていない。
 ただ人が森の中を歩いていると突然雨が降り始め、それを避けようとしていると何故か道に迷う。
 そしていつのまにか森の奥で古ぼけた小さな館に辿り着くという。
 貴族の別荘らしいその館は一見、人気はない様に見える。
 しかし雨を避ける為にその館に入ろうとした者の前で、玄関は一人手に静かに開く。
 その中にあるものは?
 ……それは知らない。
 だってその館に入って生きて帰った者はいないのだから。
 何? 胡散臭い?
 都市伝説なんてそんなものだろう。
 何? 最近の都市伝説はもっとちゃんとしている?
 知るか。そんな事。
 ともかく君は雨が降る森でそんな館に出会って、うっかりか誘い込まれる様にその玄関に入ってしまったのだ。
 振り返ってももう遅い。扉はすぐに閉まってしまった。
 君は再び前を向く。
 館の玄関はすぐにホールにつながっていて、その中央には大きなテーブルがある。
 テーブルを囲む五人の男女。
 もしかしたら君の他にもこの館に誘い込まれた人がいるかもしれない。
 テーブルを囲む青白い男女は、卓上に自分のキャラクターシートを広げ、数個のサイコロを並べている。
 奥にいる男のみが自分の前についたてを広げ、自分の手元を皆から隠している。
 男女は君達に気づいて振り返った。
 最後に奥のついたてを広げた男が顔を上げて、君達へ声をかけた。
「……やあ。君達も雨で道に迷ったんだね。……どうだい。雨が止むまで僕達とテーブルトークRPGを楽しまないかい」

★★★

MS「……やあ。君達も雨で道に迷ったんだね。……どうだい。雨が止むまで僕達とテーブルトークRPGを楽しまないかい」
イワン「何だよ、マスター。ぶつぶつ呟いていたかと思ったらやぶからぼうに」
ロジャー「おい見てみろよ、客人だぜ。久しぶりだな」
ハモン「ハイ! 貴方達もセッションする?」
ニック「わたくしは炎の紋章の魔法使いニック。一緒にファイヤーボールでモンスターをぶっ飛ばしに行こう」
MS「君達は躊躇(ちゅうちょ)しているが、背後から椅子が君達を強引に座らせるように滑ってきた。(ついたての向こうでサイコロを振る)。君達は椅子を回避するのに失敗した。椅子に座らせられてテーブルまで滑ってきた。テーブルには君達が座るスペースがあり、卓上には既に君達を模して数値化したキャラクターシートが準備されている」

 君達は突然の出来事に面食らっているだろう。
 もしかしたら『テーブルトークRPG』を知らない人がいるかもしれないが、ロールプレイングゲームとは数値化された『ごっこ遊び』だと思ってくれていい。テーブル上のキャラクターシートは君という人間をPCという数値と説明や持ち物で具体化させた物で、君の分身だ。『ごっこ遊び』で何か特別な行動をする時にはサイコロを振って、成功か失敗かを判定するわけだ。
 MSというホストが、プレイヤーというゲストを、テーブルを囲んで語り(トーク)でもてなすわけだ。
 セッションとはそれを遊ぶ一回ごとの集まり。
 この館にいた者達は君達をセッションに誘っている。
 誘いに乗るだろうか、君達は。
 館の外はまだ雨が降り続けているようだ。
 
MS「君達は『雨宿りの館』の中にいてそこにいた者達にテーブルトークRPGのセッションに誘われている。ちなみに……(サイコロを振る)情報収集判定成功。噂では雨宿りの館は雨が止むと同時に消えてしまうみたいだ。そこから帰ってきた者はいないという話だ」
イワン「おい、マスター。早く戦闘しようぜ」
ニック「わたくし達にもサイコロを振らせてくれたまえよ」

 君達の眼前のテーブルには特殊な形状をした一〇面サイコロが人数分転がっている。
 技能判定の時は一〇面サイコロを二個ずつ振り、どちらかを十の位、一の位としたパーセンテージを算出するのだ。
 判定は難易度で成功率が調整され、難易度でサイコロの目が〇・五〜三倍されるが、基本的には技能値をサイコロの目が下回れば成功だ。
 このRPGシステムの難易度の幅は大きいが、設定された技能数値は恐らく余裕があるはずだ。難易度は状況の不利さ加減によっては三倍にも上昇するが、君達の技能数値は最大で三〇〇にもなる。

MS「突然、館のホール奥にある扉が開いた。突然、その闇の中からボロボロのゾンビーが一〇体とびだしてきた。テーブルについている君達を襲おうと汚い歯を剥き出しながら歩いてくる」
ハモン「ターニングアンデッド!」
MS「OK、ハモン。突然の奇襲だから難易度二倍で判定してくれ」
ハモン「(サイコロを振る)。出た数値は九八。私の『聖なる力』技能は二〇〇だから成功ね」
MS「よし。四体のゾンビーが君の聖なるパワーで粉粉になった」

 君達は驚いたはずだ。
 実際に館の奥のドアが開いて一〇体のゾンビーがとびだしてきたのだから。
 しかもその内の四体が天井からの白い光に照らされ、粉微塵になってしまった。
 どうやらそれはハモンと名乗るグラマラスな女僧侶の仕業である事はすぐ解る。

ロジャー「僕は物陰に隠れるよ」
MS「サイコロを振ってくれ。難易度は普通だ」
ロジャー(サイコロを振る)。「オーノー! 失敗してしまった!」
MS「盗賊なのに『隠れる』技能に六〇しか割り振ってないからだよ……。君にはゾンビー一体の攻撃が自動命中する。気絶するか、技能値一つを半減するか、アイテムを一個失うか選んでくれ」
イワン「ちょっと待った! ロジャーを襲ったゾンビ―を俺が倒すぞ!」
MS「それは戦闘ターンに入ってから宣告してくれ。今はまだ戦闘前の準備ターンだ」
イワン「それはズルいぞ。さっきはハモンのターニングアンデッドを認めただろ」
MS「彼女のはルール上、認められてるから……」
イワン「MSなら臨機応変に対応してくれよ。RPGだろ!」
ニック「私はゾンビーにファイヤーボールを撃ち込むぞ。(サイコロを振る)。『火炎魔法』技能は二五〇だから、四一は六倍の難易度以下の成功。ゾンビーは六体まで吹っ飛ぶ」
MS「ちょっと……勝手に……!」
イワン「俺は剣をフルスイングするぞ! 『剣』技能は三百だから(サイコロを振る)八〇は三倍以下の成功! 三体までにダメージだ!」
MS「………………」

 ゾンビーの群を、何処からともなく飛んできたファイヤーボールと見えない剣のフルスイングが薙ぎ倒す。
 まるでボウリングのピンの様にゾンビーは過剰なダメージを受けて丸ごと全部ふっとんだ。 
 過剰殺戮(オーバーキル)だ。
 表舞台からゾンビーはあっけなく排除された。
 MSと呼ばれている男は不満そうだが言い返せないでいる。
 部屋の片隅に置かれている宝箱がガタガタ震えている。ロジャーという盗賊が隠れているのが丸わかりだ。

MS「……ゾンビーの背後から鉄の鱗に覆われた巨大な雄牛が入ってきた。その口から灰色の煙を吐き出す。難易度三倍で回避判定をしてくれ。五〇以下だ」
イワン「え! 三倍!? (サイコロを振る)。一九八。……失敗」
ロジャー「隠れててもくらうのかよ!? 九〇。失敗」
ハモン「いきなり何よ!? 一二三。失敗」
ニック「後で絶対わたくし達が逆転勝利するんだろうな? 二六七。……失敗」
MS「君達は全員ゴーゴン・ブルが吐いた石化ブレスで石になってしまった。全滅だ! ……いやまだ新しい君達がいるか」

 ゾンビーが入ってきた扉から今度は鉄の鱗で全身が覆われた巨大な牛の様な怪物が入ってきた。
 ゴーゴン・ブルという牛の怪物は鼻孔から灰色の濃い煙を吐き出す。
 と、突然テーブルについていた四人のプレイヤー達は皆、濃灰色の石に変わってしまった。PCに及ぼされた石化能力はプレイヤーの身にも直接影響を及ぼしたのだ。
 今ではこのテーブルに着いている人間で無事なのは新しくこの館を訪れた君達だけだ、

MS「さあ、どうする君達。どうせなら雨が止むまで僕達と一緒にテーブルトークRPGを楽しもうじゃないか」

 君達を不敵に眺めながらMSはにやりと笑う。
 石化したプレイヤー達は無表情に時が止まっている。
 気性が荒そうなゴーゴン・ブルの前足は床を掻いている。今にも攻撃をしてきそうだ。
 MSの片足に鉄鎖のついた足環がはまっている事に君達は気づいた。鉄鎖の先には巨大で歪つな鉄球につながっている。
 外はまだ雨が降っているようだ。雨が止んだらこの館はどうなってしまうのだろう。
 テーブルに着いた君達は次に自分がどうするかMSに宣告しなければならないようだ。

★★★